今年の印象に残った言葉

今年は定年退職のスタッフと新しい

スタッフとのメンバー入れ替えがあり、

その中でもありがたいことに仕事量は

凄まじいものがありました。

当然様々なお客様との出会いもあり、

工事中に赤ちゃんが産まれるご家族や

おじいちゃんおばあちゃんと一緒に暮らす

三世帯のご家族。今住んでいる土地に

建てかえる人もいれば新しい土地を探す

人もいらっしゃいますし、、、。

将来自分の家で開業を考えている人も

いれば、隠れ家のようにひっそりと暮らしたい

というご家族もいらっしゃいました。

そんな中で、ある若いご夫婦からいただいた

言葉がとてもうれしくて印象に残っています。

工事中の現場でお打ち合わせ後の雑談中に

「なぜムツホームを選んでくれたんですか?」

というような話になりまして、、、

「私たちは予算も少ないし葛西さんにも迷惑を

掛けていると思います。雑誌を見たり展示場を

廻ったりしていると坪単価○○万円!なんかの

安く建てられる所がありますが、食事に例えると

カップラーメンを食べている様な気分なんです。

たしかに安いんですけど、、、。

私たちは同じお金を払うなら、おふくろの味

みたいな手作りの料理がいいんです。」

・ ・ ・ というお言葉をいただきました。

初めて自分の仕事を客観的に考えてみる

きっかけになった、とても印象的なお話でした。

これからもコテコテの手作り料理をつくって

まいります。。。

葛西 瑞都

 

建築の大きさのこと

「中野の家」を設計していた時に考えていたことがあります。

それは建築物の大きさについて。空間や建物の大きさの

感じ方を表す「スケール感」という言葉があって、たとえば

敷地の広さと建物のボリュームのバランスや床面積と

天井高さの関係など様々な場面で意識して考える要素

なのですが、「中野の家」では主に3種類のスケール感を

考えながら設計していました。

まず一つ目は住宅本体と敷地との関係性。

敷地の背後には店舗の駐車場が隣接していて、隣地との

プライバシーを確保しつつ敷地に大きな余白を残したいと

考え、建物の形状を敷地の間口いっぱいに広げています。

大きな敷地と建物とのバランスを考えたスケール感です。

二つ目は薪小屋と使う人との関係性。この薪小屋はなるべく

使う人の身体感覚に近い大きさになるよう考えました。

公園の遊具やバスの停車場のように最小限の大きさに

留めて「建築」と「家具」の中間くらいの存在感を目指しました。

三つ目はアプローチの表札・インターホンと

ポストとの関係性です。敷地の入口にはインターホンと表札を

組み込んだコンクリートの立ち上がりと、お客様が自ら選んだ

かわいいポストが仲良く並んでいます。

コンクリートの立ち上がりを家具や雑貨の様な小ささで

造ることで、ポストの存在感が周囲となじむように考えました。

「中野の家」ではこれらのような大中小のスケール感をもつ

建築をつくって、使う人と建築物との関係が多様になるように

考えました。 

11/3,4のオープンハウスに来てくださった皆様、

施主のO様、ありがとうございました!

葛西 瑞都

 

完成度の割合

僕はいつも建物と関わるときに考えていることが

あります。毎回色々な人達と出会って、始まりは

ヒアリングから完成まで山あり谷ありで

プロジェクトは進んでいくのですが、

その完成後のオープンハウスでは

「この建物は瑞都さんが全て考えているのですか?」

という風な質問をよく受けます。

設計した側としては

「はい、全て僕が考えて提案しています!」

と言えれば格好いいのかもしれませんが

実は全然違うのです。。。

実質僕の占める完成度の割合は五割位でしょうか?

残りの五割のうち二割は大工をはじめとする

現場の職人さん。こちらがつくりたい空間に

仕上げるために、図面と現場を何度も見比べながら

例え手間が掛かっても休みを削ってまで仕事を

してくれる事もあります。。。

そして残りの三割は建て主であるお客様。

たとえば「ここの壁は外部のテラスと続いている

ように見えると居心地が良いと思うんですが~・・・。」

とお客様に話したときに一緒になって頭をひねって

悩んだ末に、

建て主→「よし、それでいきましょう!!せっかくなら

天井も床もテラスと合わせたいのですが!?」

僕→「外部用の材料なので少しザラザラしてますが?」

建て主→「全っっ然平気です!!」というような、

お互いにワクワクしながら物事がどんどん

決まっていくような過程がとても重要な気がしています。

だから最初のような質問が投げかけられた時に、

「僕が全部考えてつくりました」

とは口が裂けても言えないんです。

なので僕の割合は半分です。

十一月二日と三日のオープンハウスでは、

そのような僕とお客様、もしくは僕と現場の

職人達との過程を想像しながら

見学していただければと思います。

今後オープンハウスを行う予定の住宅模型も

展示しますので、たっぷり時間をかけて過ごして

いただければ嬉しいです。

葛西 瑞都