拡張する減築
弘前市の百沢地区に建っていた築40年程、
木造2階建ての空き家のリノベーションです。
元々企業の保養所として建てられたため
間取りは中廊下形式で昼間でも薄暗く風通しも悪い。
この建物を山の道具を扱うショップ兼オーナーの住宅に変えていきました。
調査と検討を進めていくと、既存の1階部分の床面積だけで
新たな全ての要求を満たすことがわかりました。
そこで全てのプログラムを下階に集約して
上階の全ての間仕切壁と天井、8割以上の床面を取り払い、
建物全体を感じられる巨大な吹抜けの空間をつくりました。
これまで2階の寝室にあった大きな窓から差し込む光が
初めて建物の隅々に届き、窓を開けると建物中の空気が動きました。
吹抜けには以前の間取りを感じられる木造の躯体を可能な限り残し、
最低限の補強に留めています。
日が落ちると下階だけに設置した照明が
キャンプファイヤーの様に吹抜けの構造体を
暗く照らします。
上階を全て余白として扱ったこの空間の感じ方は、
新築では到底計画できない性質を持っています。
床面積を大胆に減築することで、
空間や身体感覚が大幅に拡張されること。
そこにある要素から差し引くだけで、
古くて新しい空間が生まれました。
所在地:青森県弘前市
用途:店舗(物品販売業)併用住宅
工事種別:リノベーション
構造:木造(一部鉄梁)
床面積:199.14㎡
工事期間:2020年2月-2020年11月(仕上げ直前まで施工)