カフェってどんな場所?

2020年

藤崎町に計画中のカフェ併用住宅の工事が

少しずつだけど始まったので、

考えていることを書きたいと思います。

 

このお店の名前は「しずく」といいます。

(オーナーさんご夫婦が好きな言葉です)

このプロジェクトのお話を頂いてからずっと

考えていることがあって、

「みんなその場所に何をしに行くんだろうか?」ということです。

当たり前だけどカフェはコーヒーを飲んだりお菓子を食べたり

食事をしたりするところです。

カフェっていう言葉の意味を調べると、そういう風に書いています。

 

でも僕たちがカフェに行く時に、実は目的はそれ以外にも

あるんじゃないかと思うのです。

僕の場合一人でカフェに行くことは無くて、

必ず誰かと一緒に行きます。

たいがいお腹が空いていたり喉が渇いているので

食事も楽しみの1つだけれど、

大事なのは建築を含むその「場所の体験」だと思っています。

カフェというその場所でしたいことは、

お店の中のお気に入りの居場所を見つけて、

友達や恋人とおしゃべりしたり、

ノートを出して勉強したり、

本の世界に入り込んだり、

スマホをいじったり、

窓の外をぼんやり眺めたり、

ご近所さんが集まって世間話をしたり、

少しウトウトしたり。

おいしいコーヒーや料理はそんな体験を楽しく

引き立てるものになると良いなぁと思うのです。

そこがレストランや食堂と違うところで、

大事な目的は食事以外にもあるのがカフェという場所の

大きな特徴だと思います。

 

だから僕はこのプロジェクトについて手を付けるときに、

建築のことよりも先に「その場所ってなにをする場所か」という事と、

そのための気持ちの良い環境をつくりたいと考えました。

 

この建物は、高さ2mくらいの丘の上にあります。

上部のスケッチのように屋根の真ん中に孔が空いていて

ケヤキの木が顔を出しています。

この丘は初めからこの場所にあるものではなく、

今回のプロジェクトに併せて新しくつくられる丘です。

そばにある河川の氾濫による浸水被害を防ぐために

建物を高い位置に上げていて、お店を訪れた人は

わざわざ斜面をテクテク上がらなくてはいけません。

でもこのわざわざテクテク歩くことが結構大切で、

斜面を上がるにつれて大きな窓から

お店の中の様子が見えてきたり、

向こう側の窓越しに中庭が見えてきて、

始めに見たケヤキがそこに植えられている様子も伺えます。

丘を歩いて上ることがすでに特別な楽しい体験のひとつ。

店内はテーブル席が8席とカウンター席が4席のこじんまりとした空間。

テーブル席はアプローチ側と中庭側の大きな窓の間にあって、

床面積より大きな面積の窓が両隣にあることで、

内部にいることを忘れるくらいの解放感です。

カウンター席は対比的に落ち着く空間にしたくて、

それぞれの座席の正面に40cm角の専用の窓がある

ゆったりした雰囲気。(でも実は岩木山が見える贅沢な座席)

ご夫婦だけで経営するお店なので、料理をサーブできるのは

このくらいの席数で限界なのですが、実は居場所はまだまだあるのです。

というか、さっき話したようにこのカフェは料理だけがメインではありません。

 

店内の客席スペースから中庭に出て、コの字のベンチスペースで

テイクアウトメニューを楽しむこともできるようにしています。

5~6人で使えるこのスペースはケヤキの木の下の特等席。

さらにさらに、この建物の周囲に広がる斜面に腰掛けてピクニックのように

楽しむことも出来るように考えています。

建物の外周は1.6mくらい瓦葺きの屋根が張り出していて、

雨の日でも夏の暑い日でも屋根の下で外壁を背もたれに座ることができます。

(しずくオリジナルデザインの敷き物を無料貸し出しする構想中です)

 

通常の計画では利用者の人数は座席数や床面積なんかで決まってしまうけれど

このお店は天気が良ければ何人でも環境を体験できる。むしろ天気が良い日は

外で寛ぎたいくらいの開放感があります。

満席の心配がいらないだけでもこのお店を選んでくれる理由になりそうです。

また、近所の子供達なんかが気軽に遊べるような丘でもあってほしい。

お店の中も外も、ここでしかできない特別な場所の体験で

溢れていくと良いと思います。

 

のどかな集落の片隅で、建築と自然が一緒にあたらしい

豊かな風景をつくっていくのが今から楽しみです。

まずは土を盛って丘をつくって、ケヤキの木を植えるところから。

 

葛西 瑞都

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拡張する減築

2020年

山の道具のショップ「脈々」のプロジェクトをご紹介します。

弘前市百沢地区にある築38年の保養所だった2階建ての建物を

リノベーションして、山の道具を販売するショップと

小さなカフェスペース、オーナー家族の住居へ変えていきます。

既存の建物は1,2階とも中廊下形式でたくさんの個室が

造られていて、昼間でも薄暗く風通しも良くありませんでした。

初めは1階の一部を店舗、2階の一部を住居とする予定で、

80坪近くある床面積の中で使う部屋と使わない部屋を

決めていくようなイメージでした。

でもそうすると見栄えの良い表側の後ろに薄暗い

ブラックボックスを隠すような不透明な雰囲気に

なるようで、しばらく悩んでいました。

建物全体を巻き込んで、空間を開放的に感じられる

透明感のある空間構成を、ローコストで実現したいと

考えていました。

そこで必要となるプログラムと床面積を整理してみると、

1階の床面積だけで全てカバーできることがわかりました。

1階にすべての機能を集約してフリーになった2階は

床と天井を解体して1階とつなぎ、

大きな吹抜けのがらんどうをつくりだす。

すると今まで中廊下形式で昼間でも暗かった場所に

光も風も届いて、健康的な明るい空間になると想像できました。

2階の外周部には「回廊」という細い通路をくるりとまわして

全ての窓を開け閉めできるように。

元々2階の個室専用だった眺めの良い大きな窓は、

1階から空を見上げられるハイサイドライトになる。

吹抜けに浮かんでいる既存の構造体は、

既存の中廊下形式の記憶を残した自然なインテリア。

減築することが直接的に空間をつくることになる。

全体の床面積は3割も少なくなるし

部屋数も半分以下になるけれど、

空間体験としては何倍にも拡張される。

例えば新築の場合、必要な床面積の合計がそのまま

建物自体の大きさとイコールになります。

でも今回のプロジェクトでは

初めから建物という外殻があって、

その中をほぐしながらどんどんオープンにしていく。

 

スペースとして用途の決められた下階から

何も決められていない大きな上階を見上げるとき、

それは室内というよりは環境のように感じるかもしれない。

この既存の建物、この建て主さん、このプログラム、

そして新築ではなくリノベーションだからこそ

生み出されるあたらしい空間を

早く見てみたいと思っています。

拡張する減築について。

 

 

 

現在解体工事中。

これから2階の床が無くなっていきます。

葛西 瑞都

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