現在基礎工事が進行中の「高田の家」を
ご紹介します。
敷地は弘前市の市街地から少し通りを入った
住宅地にあります。周りには既に住宅などの
建物が立ち並んでいるため、空を狭める2階
建てではなく高さを抑えた平屋建てをご提案
しました。
建て主は当初から中庭のある生活、いわゆ
るコートハウスに対する憧れがあり、防犯上
の理由からもプライバシーの保たれた外部
空間をご希望でした。
僕は以前から雑誌やテレビでなどで大きな中庭を
内部空間がくるっと包んでいる形式の住宅を見る
たびに、何となく中と外の関係に窮屈さを感じて
いました。中庭が建物に閉じ込められている様な
雰囲気で、中庭に出ても少し開放感が無いような
気がしていました。
そこで提案したのが、大きな中庭をいくつかに
分けてそれぞれに違う役割を与え、それらを
各生活ゾーンの間にはめ込んだプランです。
LDK、ベッドルーム、水廻り、ゲストルームなどは
中庭によって柔らかく分けられ、部屋を移動すると
必ずいくつかの中庭のそばを通ることになります。
また全ての居室が中庭に面しています。
従来の内部が中庭を囲む関係だけではなくて
内部が中庭に囲まれる部分をつくることで、風通し
の良い開放的な空間になると考えました。
視線の抜けにも配慮していて、玄関→中庭→
多目的スペース→中庭→主寝室→外部、という
ような視線が貫通する部分をつくっています。
各中庭に与えた役割としては、
①最も広く家族みんなでワイワイ騒げる、
シンボルツリーのある中庭。
②浴室や和室から眺める坪庭の様な中庭。
③物干しができて、上部にはロフトから使える
小さなベランダがある中庭。
④リビングのテレビボードの先にある、植栽の
彩りを楽しむ中庭。
⑤2つある子供室からのみ出入りできる、子供達
専用の中庭。
という感じです。
動線としては最も広い中庭を含むとても大きな
回遊動線(1周約20メートル)を中心に、それぞれの
ゾーンに分岐していく動線です。体験としては
ひとつの建物の中を歩き回るというよりは、小さな
公園を散策するような感覚になると良いなぁと
考えています。ある建築家が「おおらかな動線を持つ
30坪の住宅は40坪の総2階建てに匹敵する広がり
を持つ」と執筆しているのですが、この住宅では内部に
外部が点在することでどこまでも内部空間が延長
されていくような広がりが生まれればと思います。
葛西 瑞都
2012年12月20日 (木曜日)