頭の中にあるたくさんの部屋と、頭の中にある起こらなかった世界。

今年も春先から色々なプロジェクトが始まります。

工事が始められない冬の間に

机に向かって設計をして、

雪が融けたら工事を始める、

まるで農家の様な仕事のリズムで

毎日を過ごしています。

 

 

僕が設計を担当している、これから

建築予定の建物について、

まだ詳しくはご紹介できませんが、

縁側の様に身近に感じられる中庭を持つ住宅や、

雰囲気の異なる部屋がスキップフロア状に

連なって全体をつくっている住宅、

小さな子供を連れたお客さんも気軽に

利用できる小さなヘアサロンを併設した住宅など、

様々なプロジェクトを同時に考えている最中です。

 

 

僕は頭の中でそんな様々なプロジェクト

一つ一つに対して部屋を作り、

その都度、部屋を訪ねることで

一つのプロジェクトに集中して作業しています。

すると面白いことがあって、時々、

というか結構頻繁に、

他の部屋から横ヤリが入ってくるのです。

例えばある住宅の「キッチンとリビングの距離感」に

ついて考えていると、

他のプロジェクトのキッチンの事が

突然頭の中によぎって、

「あのキッチンは奥さんもリビングの

テレビが見えたほうがいいかなぁ」

という感じ。

そうこうしているとまた他のプロジェクトが

顔を出して、

「あのキッチンでは子供も一緒に

ワイワイ楽しめる感じに」・・・と、

気が付くと全部の部屋のプロジェクトが

一部屋に集まって、ザワザワ集会をしているような

感覚になるのです。

すると「あれ、最初何のことを考えてたっけ?」

みたいな事も度々あって困るのですが、

いつの間にか全てのプロジェクトを並列的に、

同時進行で考えていることは

そんなに悪くないなぁと考えるようになりました。

他のプロジェクトがあるからこそ

辿り着くアイディアもあったりして。。。

敷地も、建て主の家族構成や考え方も全く違うけど、

二人三脚のように一緒に進んでいく感覚は

中々にスリリングな楽しさがあります。 

 

もうひとつ、頭の中の妄想についてお話します。

初めてお客様と出会ってから工事が

始まるまでの間、

特に基本設計の大まかな方向性、コンセプトが

決まるまでの間、

僕はたくさんのプランを描いてみます。

出口があるのか無いのかわからない迷路を

少しずつ手探りで進むように。

行き止まりにぶつかってしまうプランもあれば、

何本もの分かれ道に行き着くプランもあります。

その中で、僕なりにとりあえずゴールに

辿り着いたプランのプレゼン資料をつくり、

そこからはお客様と一緒に

迷路を進んでいくわけですが、

僕が妄想するのは

ゴールインできなかったプラン達です。

現実には実現しなかった建物がもし

実現していたら、

どんな物語が生まれていただろう?

ということです。玄関の位置やリビングの

日当たり加減、全てがまるで違う建物の、

その後をモンモンと妄想しているのです。

 

 

と、これまでの文章を今読み返してみると何だか

「コイツ大丈夫か?」

という感じがしてしまいそうですが、

2015年も楽しい、気持ち良い建物がたくさんできそうで、

ワクワクしております!!

 

葛西 瑞都