家の模型を展示することのリアリティ。

弘前市の早稲田に、完成済みや進行中の

模型を展示したギャラリーがあります。

元々小さなスペースの中に大きな模型が

ゴロゴロと並んでいて、

ずいぶん前から飽和状態。

少しずつ藤崎町の本社に送ったりしながら

やりくりしている状態です。

そんなギャラリーで仕事をしているのですが、

たまにふらっと見学に来てくれる人がいます。

その中の、先日初めて来て下さったご家族との

会話の中で少し発見したことがあります。

いつも通りひとつひとつの模型について、

こういう建物になった経緯や理由などを

説明していたのですが、

その時、不意に

「こんなリアルな展示場初めてです」

と言われました。

はて、リアルとはどういうことかな??

よくよく考えてみると、

通常住宅の展示場というのは

見学する人に向けて全ての展示物が作られています。

写真や実物を展示して、

「こんなキッチンいかがですか?」

とか、

「このインテリア、格好良いでしょ?」

みたいなことを、なるべくリアルに

表現しています。

建てる家の未来像について、

こんなに素敵な家が建ちますよ!

というのが一般的だと思います。

それに比べると、こちらで展示している

模型達はほぼ全てが過去に造られた

実物と同じものです。

工事前に建て主さんとイメージを

共有するために製作して、自宅に

持ち帰ってもらいじっくり眺められ、

試行錯誤の役に立ったリアリティがあります。

たまにコーヒーの染みとか付いてたりして(笑)。


一般的な展示と決定的に違うのは、

それぞれの模型が過去の家づくりの様子を

伝えていることです。

よくよく考えてみると、ここで伝えたいのは

僕たちの家づくりに対する考え方とか、

建て主さんとの付き合い方みたいなもの

かもしれません。

表面上のココがカッコいいとか、

ココがかわいいとかを話すよりも、

内側に潜む、ココを決めるのに

みんなで悩んで苦労した!とか、

ココは子供の本能に委ねた!とか、

そこかしこにまつわるお話の方が面白いと

感じることもよくあります。

多分、家づくりを楽しむ秘訣のひとつは

「楽しく悩む」こと。それを考える時に、

今まで他の人達がどういうことで

楽しく悩んでいたかを垣間見られるこの展示は、

結構大きな意味があるかもしれないなぁと

感じる小春日和でありました。

葛西 瑞都