空間の感じ方に変化があること

今回は「本町の家」の内部について。

内部空間と同じ大きさの中庭が

寄り添っている建物なので

内部の各スペースも、

中庭がどう見えるか?とか

中庭からどう見えるか?とか、

頭の中で内と外を行ったり来たり

しながら考えました。

内部ではできるだけ様々な感じ方の

空間をつくろうとしています。

吹抜けで勾配屋根の迫力を感じられる

リビングや、小上がりで天井高さの低い和室、

中庭を間近に眺められるダイニング、

大きな窓からの光が充満する

2階の渡り廊下など。様々な性質の

居場所をつくると、

その場所の使い方や家族同士の距離感や

中庭との関係に多様性が生まれると

いつの間にか無意識に考えているようです。

多様性があると、想像していなかった

色々な楽しい出来事が

起こりそうだからでしょうか。。。

そしてこの「本町の家」で一番期待しているのは、

その多様性の中で内と外が混ざり合った

新しいライフスタイルが生まれることです。

天気の良い日に窓を全開すると、

外まで住空間がブワっと広がっていくような

感覚があって、いつの間にか

居間の続きとして庭で寛いだり、

子供が遊んだりするような感じです。

空で街と繋がっているこの中庭を、

まるで内部の様に感じたり使ったりできるならば、

物理的な建物の大きさや床面積なんていうものは

全然重要じゃないと考えています。

街角の交差点にひっそりと佇むこの住宅は

密かに街全体へ広がっていくんだ!

と信じて設計しています。

あ~、妄想は楽しいし、

妄想が現実になるのはもっと楽しいなぁ・・・。

 

葛西 瑞都

 
 

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「本町の家」

前回も少しご紹介した「本町の家」

の模型が完成して、ワクワクが納まら

なかったので、今回も

「本町の家」のお話です。

敷地は街の大通りから一本入った、

人通りも車通りも多い道路の一角にあり、

さらに細い道にも接している、

いわゆる二面接道の敷地です。

建物自体の設計以上に、

敷地にどのように配置するかが

大きな課題でした。

僕としては、住宅を道路からなるべく離して、

大きな窓はカーテンで閉じるような外観は

つくりたくありませんでした。

住人が周辺地域を信用していないような

雰囲気になるからです。

そこで、内部と同じ大きさの外部空間を持つ

住宅を提案しました。

住宅と街との間に大きな中庭を配置することで、

お互いの中間領域の様な空間をつくっています。

歩行者の空を狭くしないよう建物の高さを

極力抑え、屋根には大きく育った中庭の緑を

街と共有できるよう大きな開口を設けました。

住み手にとっては周囲からの視線や騒音を

気にすることなく、部屋着のまま庭にふらっと

出られるような安心感を。街にとっては

このお家がある事で、

いつの間にか少し風景が豊かになっているように。

派手な装飾や奇抜な形の「目立つ建物」ではなくて、

周辺と静かに調和しつつも

「際立つ建物」になれば良いと思います。

 

葛西 瑞都

 
 

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内部と外部を等価に考える。

久しぶりのブログになってしまいました。

さて、最近設計させていただく住宅は

実例のオープンハウスや掲載雑誌の

影響もあってか、中庭やテラスの様な外部空間と

室内とが流動的に繋がっている事が

多いような気がしています。

普段から建物だけではなく敷地や周辺環境に

対しても気を配っていますが、

内と外が繋がる空間の場合、

どのように接しているか、

その関係性自体の考え方から設計するように

しています。

そんな中、平川市で工事中の「本町の家」という

住宅は、少し今までとは違う関係性を考えていて、

今回はそのことを少し書いてみたいと思います。

「本町の家」は中庭のある家型の形をした

住宅です。

通常は庭やテラスなどの外部空間を

どう計画するか考える時、

先に内部のボリュームを考えて、

外部はそのボリュームの真ん中をくりぬいたり、

端に寄せたりして、

「内部に対してどう配置するか?」

と考えているですが、

「本町の家」では内部と外部の優先順位を

等価に扱って設計する事をテーマにしています。

敷地の中に全体の縁取りとなる壁を

ぐるっと廻して、その中の半分を室内、半分を

中庭にするという、とてもシンプルな考え方です。

同時に出来上がる内と外とに優先順位はありません。

そして内部はもちろんですが外部も内部と同じ位の

密度で設計しています。

例えばリビングを考えるようにコンクリート土間の

テラスのことを考えたり、家具の置き方を考えるように

植栽の配置を決めたり。

内外を同じ比重で考えてみると、なにかあたらしい概念で

家づくりができそうな、

楽しいことが起こりそうな気がしています。

あたらしい広さの感じ方のこと、

あたらしい家族同士の距離感を、

シンプルな構成でつくること。 

完成が楽しみです!

 

葛西 瑞都

 
 

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合言葉は「せっかくだから」

さて、「早瀬の家」は一段落し、建て主さんが

忙しく引越し中だそうで、後で住まい方を

見学させていただくのが楽しみです!

 

さて今回は、いつもやっていることですが、

模型写真と完成写真を並べて比べて、

感慨深く振り返ろうと思います。。。

 

と、あともうひとつ。

僕や兄の瑞樹が建て主さんと考えた家は、

いつも決まって造るのが難しいんです。

図面や模型を職人さんに見せただけで、

「大変そうだ・・・」

という心の声が聞こえてきます。

たまに肉声で聞こえますし。

 

実際に現場で作業するのは職人さん達なわけで、

たしかに気持ちはわかります。

でも、とびきりオーダーメイドの気持ち良い空間を

造ることは簡単なわけないので、

設計者は誰よりも強い気持ちで

みんなと向き合わなければいけません。

例えば階段を造るとき、難しくて大変な方法と、

簡単で楽な方法があるとして、出来栄えが変わるなら

難しくて大変な方法で造ってもらうしかありません。

 

そのときに僕にとって大事なキーワードが

「せっかくだから」。

職人さん達にとってはたくさんある現場のひとつなだけ

かもしれないけれど、

建て主さんにとっては一生の宝物になるわけで、

「せっかくだから、難しい方に!」

というのが何となく、

僕の芯になっている気がしています。。。

 

前置きが長くなってしましたが、模型写真と実物写真を

交互に掲載していきます。

風除室の木製外壁と木製建具も「せっかくだから」。

土間のセルフペイントも「せっかくだから」。

木の壁で仕上げた階段も「せっかくだから」。

アーチ型の出入口も「せっかくだから」。

「せっかくだから」キッチンは2本とも手造りで。

「せっかくだから」高い天井には木を張って。

「せっかくだから」勝手口は板張りに。

「せっかくだから」植栽はたっぷりと。あと飛び石も。

と、いろんなところに「せっかくだから」があります。

 

これからも、「せっかくだから」を

続けていきたいと思います。

せっかくだから。

 

葛西 瑞都

 
 

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ようこそ、「早瀬の家」へ!後編

前編の続きです!

階段を上がって2階へ。。。

階段を上がる途中、個人的に大好きな瞬間があります。

それはリビングの上部に架かっている梁を横目に

通り過ぎる瞬間。

下階から上階へ切り替わる感覚や、

小上がりサブリビング下部の誰のものでもない空間を

眺める感じがいいんです。

吹抜けに架かるサブリビングへの渡り廊下部分は、

梁の上にウッドデッキを敷いただけの簡単な造りです。

独特の浮遊感があって、歩くだけで少し楽しく感じます。

渡り廊下の向こうには全面開口で内庭と繋がるサブリビング。

床が60cm程上がっていて天井も高い、屋根裏部屋の様な

雰囲気を目指した場所です。それではサブリビングへ。

階段の途中、隙間から1階の内庭がちらっと見えます。

部屋の面積はそんなに大きくないのですが、凄い開放感!

床がラワン合板張り、天井がシナ合板張りの

シンプルな空間です。

2つあるバルコニーは渡り廊下と同じウッドデッキを

敷いてあります。

外壁でくるっと包んで、天井は低く抑えて、

外にある小さな部屋のようにつくりました。

テラスに出てみると・・・

1階にいる家族と楽しい繋がりが生まれそうです。

当たり前のことですが、2階建ての住宅は

1階にいるときには地面が近く、

2階に上がると空が近くなります。

「早瀬の家」では特にそれをつよく感じられます。

↓ちなみ1階から見上げた空はこんな感じです。

壁面の開口は風景を様々に切り取ります。


ということで長々とご紹介させていただきました。

オープンハウスに来ていただいた方はわかると

思いますが、やはり写真の持つ情報量は、

実体験にはかないません。

(僕の写真の撮り方のせいも多々ありますが)

でも、このお家の持つ気持ち良さそうな空気感

みたいなものは少しだけでも伝わったかな?と

思います。 

 

さぁ!これから始まる家づくりも頑張らなくては!

葛西 瑞都

 
 

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ようこそ、「早瀬の家」へ!前編

え~、何だかいつも以上にテンション高めです。

実は今日は「早瀬の家」のお引渡しでした。

いつも書いてますが、設計中や工事中は

僕の場所だとばかり思っていたのに、

工事が終わるとパッと僕のものではなくなります。

寂しさ2割、嬉しさ8割といったところですが、

建て主さんの嬉しそうな楽しそうな様子を見ると

それだけで大満足です!

というわけで、先日写真家さんに

撮影していただいた写真はまだありませんが、

僕が撮ったお気に入りの写真をご紹介します!

なんだか長くなりそうですが、お付き合いを。。。

まずは外観から。

↑真っ白な家型に木張りの小さな家型が

くっついた外観です。

全体像は写真家さんの写真におまかせしてます。

↑木製引き戸を開けて風除室へ。

内部も木製外壁で、古材っぽいポストと船舶用照明。

↑リビングに入ると、光が充満した内庭が

広がっています。

↑セルフペイントで仕上げたコンクリート土間。

↑リビングからキッチン方向を見ると、

キッチンの高さが押さえられているのがわかります。

だいたい床面から30cm位の高さに天板があって、

ダイニングテーブルも一体として造ってあります。

↑階段の側面には、なにやら人が入れそうな

孔がありますね。。。

↑階段下の奥には、1人用の書斎があります。

カウンターの下は床が下がっていて、足を

下ろして座ります。

本棚も座ったまま最上段まで手が届く高さ。

床は畳を敷きました。

↑キッチンはシンク側と加熱機器側を2本に分けて

造りました。シンク側は木製天板で、加熱機器側は

ステンレス仕上げです。

↑ダイニングテーブルの天板は、コンクリートの

基礎によって支えられています。

建築と家具が交じり合った、職人さんの

自慢の一品です。

テーブル廻りは掘りごたつになっていて、

4人程度が腰掛けられる大きさです。

↑ダイニングテーブル上部には錆びた

鉄のソケットが良い感じの裸電球照明。

↑LDK部分は天井を見上げると、2階の床を

支える骨組みがダイナミックに現しになっています。

梁には何かぶら下げたり、ぶら下がったり、

引っ掛けたり、アイディア次第で楽しい使い方が

たくさんありそうです!

そして内庭へ。

↑2階のテラスにいる家族とおしゃべりできます。

↑内庭はこれから植栽を増やして、山の中の様な

もっさりした感じにしていきたいそう。

林に囲まれたような雰囲気の土間は風通しが良くて、

本当に気持ち良い居場所です。

勝手口へ続く飛び石も良い感じ。

↑勝手口は真鍮製の簡素な鍵を付けました。

開け放つとさらに風通しがUP!

 

・・・と、まだ半分くらいご紹介したいことがあるので、

続きは後編でお伝えいたします。。。

 

葛西 瑞都

 
 

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「早瀬の家」の写真撮影

29日、30日とオープンハウスをさせていただいた

「早瀬の家」。たくさんの方に遊びに来ていただき、

ありがとうございました!

そして今日は雑誌用の写真撮影。

気持ち良さそうな写真が山ほど撮れました!

発売は来年の2月頃だそうですが、今から

原稿のレイアウトを夢中で考えています。。。

 

葛西 瑞都

 
 

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セルフペイントと内庭の植栽

29・30日にオープンハウスを行う「早瀬の家」。

工事も終盤なのですが、本日は内部の

コンクリート土間のセルフペイントと、内庭の植栽を

行いました。

↑の写真は着色部分と未塗装部分。

内庭とリビングの中間にある土間を、

コンクリート専用の水性塗料でこげ茶色に

仕上げました。

僕と建て主ご夫婦の素人3人で挑戦。

以前から、建て主さん自身が工事の一部分にでも

関われるようにしたいなぁ~と考えていたのですが、

とても楽しく貴重な時間を共有させて頂きました!

素人ならではのラフな感じが上手く作用して、

時間が経ったような、不思議な味のある

仕上がりになりました。

そしてこの日は内庭に新たな住人が。。。

モミジ、クロモジ、アオダモ、ヒメシャラの4人です。

やっぱり、植栽が入ると良いですね!

風でゆっくり揺れる枝葉を眺めるだけでも

気持ちが良いです。

将来は建て主さん自身でもっと木々を増やして、

山の中の様なボリューム満点の空間に

したいそうです。

内庭と勝手口の間に置いた飛び石も良い感じです!

(建て主さんが造園屋さんで衝動買いしてくれました)

 

と、ハイテンションなままズラーっと書きましたが、

写真では伝わらない良い空気感があるお家です。

みなさまぜひ、オープンハウスにいらしてくださいね!

 

葛西 瑞都

 
 

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「早瀬の家」の近況

「早瀬の家」は現在、大工さん達が

四苦八苦しながらも着実に作業が進んでいます。

はじめはA3の用紙の中にしかなかった小さな世界が、

今は実寸大となって手触りや匂いまで感じられる

現実味を帯びていて、

ドキドキワクワクが止まらない三十路です。

現場ではオークのフローリングが張られ、

壁や天井が出来上がりつつあります。

後は階段や家具の製作をして、塗装等の仕上げ工事へと

移行していきます。

内庭への植栽も楽しみです!

最近、この「早瀬の家」のご家族の許可を頂いて、

まだ設計中のご家族に工事中の現場を

ご見学していただきました。

実際の床面積はとても小さいけれど、寝巻きでも出られる

内庭があったり下の階とつながる吹抜けがあったりして、

とても広々暮らせる住宅です!

と自画自賛のような説明ばかりになってしまいましたが、

このお家の気持ち良さと、職人さん達の涙ぐましい努力と、

建て主さんのワクワク感は

伝わったんじゃないかと思います。。。

・・・ところで話は変わりますがこの内庭、

ホントに気持ち良いんです。

人目を気にしなくていいし眺めはいいし、

風通しは最高だし。

僕が住人なら家の中よりもここにいる時間の方が

長いかも。あぁ、完成が待ち遠しいような、

現場が終わるのが勿体無いような、そんな感じです。。。

 

葛西 瑞都

 
 

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建築と建て主さんの理想的な関係。

建築という言葉を聞くとどこか難しいイメージがあって、

とっつきにくい感じがあると思います。

たしかに公共の施設やお店なんかの

不特定多数の人が使う建物は、色々な人にとって

快適になるようにある一定のガイドラインみたいな規定があって、

なんというか、全体的に平均点の高い空間が求められます。

でも、住宅に関して言えばそんなことはなくて、

暮らす人の好きなようにつくることができます。

趣味や遊びのための家や、仕事場がくっついた家、

子供が走り回れる家、友達をたくさん呼べる家、

ただひたすらダラ~っと過ごす家。。。 

自分が居心地の良い空間を考える時に、

ガイドラインはありません。

だから、難しいイメージを取り払って、

みんなで前のめりになって一緒に考えていくような

お付き合いが理想的だと考えています。

工事が始まると建て主さんとの打ち合わせも

ほぼ100パーセント現場で行われます。

例えば収納棚のデザインを決める時に、

細かな寸法が入った図面や資料も一応?用意して

いくのですがだいたいはその場で壁に手を当てて

「この辺に棚板がきます」とか、「壁からの出はこのくらいです」

みたいな感じで決まっていきます。

詳細で正確なはずの図面よりも、

現場で身振り手振りで考えた方がずっとわかりやすいからです。

すると建て主さんも、「このくらいがいいです」と

手を使って表現できます。

図面はその辺に置いておいて。

頭でなく体を使って

考えていると、時には建て主さんから素晴らしい

アイディアを頂けたりする時もあります。

一般的なイメージでは難しそうでとっつきにくかった建築が、

実際のところ身振り手振りで考えられていたり、

時にはあまり考えず直感で決断していたり、

とても自由に決められていきます。

多分これは結構重要なんじゃないかと考えていて、

そんなふうにつくられたお家に暮らすご家族が

「やっぱりじぶん家が一番!」

と思える大事な要素だと思うんです。。。

 

葛西 瑞都

 
 

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