妄想から現実へ変わる瞬間の楽しさ

全てのプロジェクトがそうですが、

はじめはふわっとした妄想の様なものから

スタートして、建て主さんと打ち合わせを

重ねていく中で少しずつ

形が手にとるようにわかってきて、

大きな模型を眺めることで

実際のスケール感覚を感じることが

できるようになります。

そして工事が始まると、今までは

頭の中にしかなかったイメージが実寸大で建ち上がります。

実際に歩きまわったり、2階から内庭を見下ろしてみたり、

遠くの景色を眺めたり、風を感じたりできます。

着工前までは完成形ばかりを執拗に想像していた僕にとって、

現場はどこか完成形の面影があって既視感のようなものを

感じると同時に、新しい発見にもあふれていて、

それがすごく楽しいのです。

そして多分それは建て主さんも一緒のことで、

何ともいえない高揚感を共有しながら現場が

進むのをみんなで楽しんでいます。

これからは建て主さんが主役で、

様々な悩ましい決断の連続が待っています。

僕は相変わらずオマケとして、頑張ります!笑

葛西 瑞都

 
 

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「早瀬の家」の骨組み

鶴田町に建つ「早瀬の家」は、

いよいよ骨組みが組み上がりました。

はじめ大工の棟梁と模型を交えて話し合った時、

棟梁が模型を見ただけで

このお家の難易度を見抜いて、

「こりゃまた大変そうだ!」

と開口一番話したのを覚えています。。。 

現場では大工さん達が格闘中。

ただでさえ複雑なスキップフロアで

組むのが難しいのに、更に柱や梁などの構造部分が

完成後もそのままインテリアに現れるので

キズが付かないように注意が必要です。

大事なのは大工さん達の経験とアイディアと判断力!

図面通り、イメージ通りには中々いかないのが現場の常ですが、

その難題を乗り越えてくれるのはいつも現場の職人さんです。

設計の僕の力は現場ではオマケみたいな物で、

今回の「早瀬の家」の建て方も主役は大工さんたちでした。。。

葛西 瑞都

 
 

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「早瀬の家」

北津軽郡の鶴田町に建つ「早瀬の家」をご紹介します。

ご夫婦と2人の子供が暮らすための住宅で、

シンプルなイエ型をしています。

建物の末端部分にまとまった広さの「内庭」という

外部空間があって、リビングスペースが

延長されているような身近な距離感があります。

元々この空間を建て主さんにご提案した理由には

内部だけで完結しない空間をつくりたかった事と、

奥様が植物を触るのが好きなことがあります。

なので、内部に寄り添うような外部を

つくりたいと思いました。

床面積という数字的な大きさを飛び越えるための

空間でもあります。

内庭の大きなスケールと呼応するように天井は高く。

真上にある2階の床を60センチ位持ち上げて、

2階床の裏面がそのまま1階の天井。

構造材も現しにしています。

ハンモックや植物の鉢が吊るし放題です。

木で仕上げるリビング階段には小さなにじり口。

テレビボードの一部を踏み台にして進むと、

奥には畳敷きの小さな書斎があります。

このお家の隠れキャラ的な存在です。

キッチンの床はリビングに面した黒い土間が続いていて、

55センチ程下げることで掘りごたつテーブルに

座っている家族とキッチンに立つ人との高さを

合わせています。

写真の右側は加熱機器を組み込むステンレス天板、

左側はシンクを組み込む木製天板です。

次は内庭へ。

内庭はテーブルセットが置ける位の土間が

あって、植物たちに囲まれているような雰囲気です。


↑内庭とLDKとの関係がわかります。

物件紹介のページに無い写真も少しだけ。

(飛び石にはモザイクタイルの切れ端を

使いました。中々良い雰囲気です)

一応植栽の設計もしていて、家庭菜園や草花、

低木、中木を設えたいと思っています。

直射日光のあまり必要ない植物が植えられます。

モミジなど、季節感のあるものも良いですね。

次は2階へ。

LDKの真上にあるベッドルームは浮遊感のある

屋根裏部屋のような空間です。

吹き抜けに掛かるウッドデッキ製の渡り廊下の向こう、

2階の床面からさらに階段で3段上がります。

LDKと同じように全面開口で内庭と接していて、

空を近くに感じることができます。

天井は屋根の形で木で仕上げ、ここも構造材を

現しにしています。

実はこのベッドルーム、設計当初は「子供部屋」

という名前でした。(将来は2室に仕切る予定)

あまりに気持ち良さそうだったので子供だけズルい!

ということで部屋名を変更。

別にもう一部屋ある「元主寝室」がとりあえずの

子供部屋ということになりそうです(笑)

この細長いベッドルームには内庭上部の

両サイドにウッドデッキテラスがあります。

部屋着のままふらっと出て、

洗濯物を干したり景色を楽しんだり、

植栽に直接触れられると楽しいなぁとか

考えています。

 

地鎮祭も終えて、いよいよ着工です!

 

葛西 瑞都

 
 

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家の模型を展示することのリアリティ。

弘前市の早稲田に、完成済みや進行中の

模型を展示したギャラリーがあります。

元々小さなスペースの中に大きな模型が

ゴロゴロと並んでいて、

ずいぶん前から飽和状態。

少しずつ藤崎町の本社に送ったりしながら

やりくりしている状態です。

そんなギャラリーで仕事をしているのですが、

たまにふらっと見学に来てくれる人がいます。

その中の、先日初めて来て下さったご家族との

会話の中で少し発見したことがあります。

いつも通りひとつひとつの模型について、

こういう建物になった経緯や理由などを

説明していたのですが、

その時、不意に

「こんなリアルな展示場初めてです」

と言われました。

はて、リアルとはどういうことかな??

よくよく考えてみると、

通常住宅の展示場というのは

見学する人に向けて全ての展示物が作られています。

写真や実物を展示して、

「こんなキッチンいかがですか?」

とか、

「このインテリア、格好良いでしょ?」

みたいなことを、なるべくリアルに

表現しています。

建てる家の未来像について、

こんなに素敵な家が建ちますよ!

というのが一般的だと思います。

それに比べると、こちらで展示している

模型達はほぼ全てが過去に造られた

実物と同じものです。

工事前に建て主さんとイメージを

共有するために製作して、自宅に

持ち帰ってもらいじっくり眺められ、

試行錯誤の役に立ったリアリティがあります。

たまにコーヒーの染みとか付いてたりして(笑)。


一般的な展示と決定的に違うのは、

それぞれの模型が過去の家づくりの様子を

伝えていることです。

よくよく考えてみると、ここで伝えたいのは

僕たちの家づくりに対する考え方とか、

建て主さんとの付き合い方みたいなもの

かもしれません。

表面上のココがカッコいいとか、

ココがかわいいとかを話すよりも、

内側に潜む、ココを決めるのに

みんなで悩んで苦労した!とか、

ココは子供の本能に委ねた!とか、

そこかしこにまつわるお話の方が面白いと

感じることもよくあります。

多分、家づくりを楽しむ秘訣のひとつは

「楽しく悩む」こと。それを考える時に、

今まで他の人達がどういうことで

楽しく悩んでいたかを垣間見られるこの展示は、

結構大きな意味があるかもしれないなぁと

感じる小春日和でありました。

葛西 瑞都

 
 

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判断基準に訴えかけるアイディア。

僕がご提案するプランの中には

しばしば吹抜けが登場します。

前回のブログ書いているように、

吹抜けには空間を完結させない効果が

あるように思えるし、

家族同士のコミュニケーションが

生まれると考えているからです。

そんな吹抜けですが、

小さな建物であればある程

効果があると思っています。

小さな建物は1、2階に家族が点在

していても実は距離が近かったりするので、

少し床を取り払って小窓を設けるだけで

家族同士が繋がるからです。

 

例えば30坪程度のお家だとして、

子供部屋を少し切り詰めて5帖分位の

吹抜けを計画し、子供部屋と下階を窓で繋いだときに、

「良いと思うのでこのまま残してください」

と言われる場合があります。

建て主によっては

「もったいないから床にしてくれ」

と言われることもあるわけですが、

この建て主は

「10帖の子供部屋より広く感じるよ」

と笑ってくれました。

ここで考えたいのは、どの建て主が

良いとか悪いとかという話ではなく、

建て主の判断基準に訴えかける

アイディアについてです。

この建て主は多分、数字上の床面積は

減ってしまうけれど、本質的に広がりを

感じられるとイメージしたと思うのです。

今回はわかりやすく吹抜けを例にしましたが、

吹抜けに限らず、

建て主に自分の判断基準について

一度考えてもらえるきっかけとなるような

アイディアは、家づくりをしていく上で

結構重要なのではないか?

と考えるようになりました。

設計側も建て主側も初めは

手探り状態だった完成像が、

少しずつリアリティを持ち始める過程の中で、

良い意味で建て主を悩ませるアイディアを

考える事が、最近気付いた僕の課題です。

 

葛西 瑞都

 
 

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寸法の不自由さから抜け出す試行錯誤。

空間には寸法の持つ不自由さというものが

あると思います。

建ち上がる建築は必ず高さとか長さとか

幅とか奥行きなどの寸法を持っていて、

それらを元に面積や容積を

計算することが出来ます。

すると、その建物が持つ広さは、

㎡とか帖とか坪などの単位で

数字に置き換えられます。

○㎡だから広い、○帖だから狭い

という判断基準ができてしまう。

確かに家具を置くために必要な

面積みたいなものは必要だと

思いますが、身体一つで空間を

感じてみる時、数字上の広さは

あまり重要じゃない気がしています。

例えば同じ床面積の部屋でも、

窓ひとつ無い完結した部屋よりも、

縁側なんかの半屋外空間と大きな開口で

繋がっていて気分しだいで

内で過ごすか外で過ごすか

選択できるような部屋で過ごす方が、

開放的で広々と感じるに決まっています。

部屋の向こうに続きがあるからでしょうか。

縁側みたいに大胆な仕掛けでなくても、

小さな吹抜けひとつあるだけで、

空を眺められたり2階にいる家族と

繋がることができます。

スキップフロアにして斜め方向の

繋がりをつくってみてもいいかもしれないし、

内装の雰囲気を変えるだけでも

違った広さで感じられると思います。

敷地条件や建物予算でほぼ

建物の数字上の規模は決まってしまいますが、

実際の床面積以上の広がりを

持つ空間をつくれると信じて

試行錯誤することで、寸法の不自由さから

抜け出したいといつも思っています。

 

葛西 瑞都

 
 

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頭の中にあるたくさんの部屋と、頭の中にある起こらなかった世界。

今年も春先から色々なプロジェクトが始まります。

工事が始められない冬の間に

机に向かって設計をして、

雪が融けたら工事を始める、

まるで農家の様な仕事のリズムで

毎日を過ごしています。

 

 

僕が設計を担当している、これから

建築予定の建物について、

まだ詳しくはご紹介できませんが、

縁側の様に身近に感じられる中庭を持つ住宅や、

雰囲気の異なる部屋がスキップフロア状に

連なって全体をつくっている住宅、

小さな子供を連れたお客さんも気軽に

利用できる小さなヘアサロンを併設した住宅など、

様々なプロジェクトを同時に考えている最中です。

 

 

僕は頭の中でそんな様々なプロジェクト

一つ一つに対して部屋を作り、

その都度、部屋を訪ねることで

一つのプロジェクトに集中して作業しています。

すると面白いことがあって、時々、

というか結構頻繁に、

他の部屋から横ヤリが入ってくるのです。

例えばある住宅の「キッチンとリビングの距離感」に

ついて考えていると、

他のプロジェクトのキッチンの事が

突然頭の中によぎって、

「あのキッチンは奥さんもリビングの

テレビが見えたほうがいいかなぁ」

という感じ。

そうこうしているとまた他のプロジェクトが

顔を出して、

「あのキッチンでは子供も一緒に

ワイワイ楽しめる感じに」・・・と、

気が付くと全部の部屋のプロジェクトが

一部屋に集まって、ザワザワ集会をしているような

感覚になるのです。

すると「あれ、最初何のことを考えてたっけ?」

みたいな事も度々あって困るのですが、

いつの間にか全てのプロジェクトを並列的に、

同時進行で考えていることは

そんなに悪くないなぁと考えるようになりました。

他のプロジェクトがあるからこそ

辿り着くアイディアもあったりして。。。

敷地も、建て主の家族構成や考え方も全く違うけど、

二人三脚のように一緒に進んでいく感覚は

中々にスリリングな楽しさがあります。 

 

もうひとつ、頭の中の妄想についてお話します。

初めてお客様と出会ってから工事が

始まるまでの間、

特に基本設計の大まかな方向性、コンセプトが

決まるまでの間、

僕はたくさんのプランを描いてみます。

出口があるのか無いのかわからない迷路を

少しずつ手探りで進むように。

行き止まりにぶつかってしまうプランもあれば、

何本もの分かれ道に行き着くプランもあります。

その中で、僕なりにとりあえずゴールに

辿り着いたプランのプレゼン資料をつくり、

そこからはお客様と一緒に

迷路を進んでいくわけですが、

僕が妄想するのは

ゴールインできなかったプラン達です。

現実には実現しなかった建物がもし

実現していたら、

どんな物語が生まれていただろう?

ということです。玄関の位置やリビングの

日当たり加減、全てがまるで違う建物の、

その後をモンモンと妄想しているのです。

 

 

と、これまでの文章を今読み返してみると何だか

「コイツ大丈夫か?」

という感じがしてしまいそうですが、

2015年も楽しい、気持ち良い建物がたくさんできそうで、

ワクワクしております!!

 

葛西 瑞都

 
 

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