引き算のデザイン。

近年急増している空き家の問題。地元の市町村でも何かと

対策が講じられているようですが、

人が減っていくこれからのことを

僕なりに少し考えてみることにしました。初めて。

 

僕の働く会社は建築会社なので、建築をつくることが専門です。

ほとんどの場合が更地に建物をつくったり、

もしくは今住んでいるお家をもっと長い間快適に暮らせるように

手を掛けてあげることが僕の仕事です。

 

そんなわけで、僕が普段持っている感覚は足し算です。

更地の敷地をゼロと捉えて新たにつくるのも足し算で、

既存の建物を改修するときも足し算。

街の視点から見ても、空いている隙間を埋めるように

建築物で埋めていく、足し算です。

 

でもこれから多分僕達は、

引き算のことも考えていかなければいけない。

建築はいつも「人」がいてはじめて求められるもので、

その「人」がどんどん減っていくということは

街からどんどん建築が減っていくということです。

建物をつくる足し算のときは赤ら顔で一生懸命

デザインするのに、

いざ引き算になると知らんぷりだとダメですよね?

 

じゃあ引き算のデザインってなんだろう?

例えば、思い切って床の面積を減らしてみましょう!

総2階建ての大きな古いお家って、結構見かけます。

住み手に対して部屋の数(床面積)が過大なので、

1、2階とも、半分くらい床を取り払って

外壁と屋根だけにしちゃいましょう!

断熱や仕上げも無し。そこを外部として、

残った内部との間に断熱材や大きな窓を。

外部の屋根や壁には好き勝手に開口を開けて、

半屋外の大きなテラスに!

内部空間が減るので空調負荷も減少。

家族だけの外部空間がいきなり出現するわけです。

 

これはほんのアイデアのひとかけらみたいなものですが、

これが専用住宅だけではなく、

例えば空室の多いアパートなんかの場合は住人同士が

共有できる庭や菜園をつくって建物自体に付加価値を生んだり、

商業ビルなんかは2,3枚床を抜いて壁も取り払うことで、

街から直接アクセスできるようなアクティビティをつくったりできます。

 

今までの建物を、これからの人数に合わせて引き算していく。

そこを上手く楽しくデザインできれば、「少子化」とか「空き家」とか

一見ネガティブに感じるいまの状況も、なんだかワクワクする

可能性が感じられてくると思うのです。

 

葛西 瑞都

 
 

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「桜川の家」について

確認申請も無事に通って建築工事が 
 
 
 
始まったばかりの「桜川の家」を紹介します。 
敷地は廻りに新旧様々な家が建ち並ぶ 
 
住宅地にあって、道路を挟んだ向かいには
 
開放的な公園があります。
 
 
敷地を訪れるといつもたくさんの子供達が遊んでいて、
 
大きな広場や大きな植栽があったりする、
 
とても良い雰囲気の公園。。。
 
 
設計する中でその都度大なり小なりの変更が
 
あったけれど、いつもこの公園や近隣の環境を
 
どうやって取り込んだり、
 
もしくは距離感をとったりするかが大きなテーマでした。
 
公園の気持ち良い環境を取り込むためには
 
ある程度大きな窓をバーンと設けたい。でも、
 
たくさんの人が集まる公園や、
 
道路からの視線を遮る壁も欲しい。
 
対称的な課題をどうにかクリアできないかと検討した結果、
 
大きなテラスを建物に内包させることで
 
これらの課題をクリアしました。
 
家族が集まる空間と外部との間に
 
2層吹き抜けのテラスを設けて、外側の壁によって
 
外部の視線や騒音をコントロールします。
 
内部では大開口で外部と開放的に繋がり、
 
向こうの公園の木々や広い空を存分に
 
取り込めるようにしました。
外観についても考えていることがあります。
 
ふつう建物は壁一枚で内部と外部が
 
はっきり分かれていることが多く、
 
外観には内部を包むための外壁だけが現れてきますが、
 
この「桜川の家」では、大きなテラスによって内と外の間に
 
少しグラデーションが生まれています。
 
四角いハコに大きな開口があって、
 
その向こうにはまた外がある、
 
街が少し建物の中に入り込んでいる印象です。
完成は八月。気を引き締めて頑張ります!
 
 
葛西 瑞都
 
 

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暮らすことのセンス。

メンテナンスの為に2012年に完成した「中野の家」へ行って来ました。

あえて少し離れた場所に車を置いて、

設計当時を思い出しながら歩いていきます。

一枚目の写真は「中野の家」の裏側。

ホームページや雑誌では正面の写真を良く使っていましたが、

実は裏側にかなり気を使っています。

というのも、裏側にはスーパーマーケットの駐車場があって

この「中野の家」はとても目に付きやすい位置にあるからです。

いつも通り、外観から間取りがわからないように注意して

窓の配置を決めています。

敷地に入ってから建物までの、ゆったりしたアプローチ。途中で

大きな庭や薪小屋を横目に追い越します。

庭にはポツポツとシンボルツリーのように桜の木がありました。

もう少しすると花が咲くそうです!

中へお邪魔すると、もうすっかり主役になった薪ストーブが

「おっ久しぶり」という感じでお出迎え。

この春から小学生になる娘さんや、去年生まれた息子さんのおかげで

たくさんの物がそこここにあって、

家がきちんと生活の器になれてる!と感じました。

「床と壁と屋根でできた、はっきりとした形のある建築」と

「親と子供達でつくられる、形なんかない日常の暮らし」が、

とっても気持ちよく混ざり合った良い空間になってました!

一応形式上はメンテナンスの下見だったのですが、僕は終始

「良い感じですね~」ばっかり。美味しいコーヒーまで頂いて。。。

その時僕は、

「この建て主さんは暮らすセンスが良いんだろうなぁ」

と考えていました。

センスというと洋服選びとか音楽の事とかが頭に浮かびますが、

暮らすセンスというのは、建築やその外部環境も含めて

「楽しく生活するセンス」です。

高級な家具や生活用品に囲まれた生活をよく「ハイセンス」とか

言いますが、僕としてはこの暮らしこそがハイセンス。

モチベーションもグワっと回復したし、今年のプロジェクトも

ドキドキワクワクしながら頑張ってまいります!!!

 

葛西 瑞都

 

 
 

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住宅雑誌「WAGAYA」が発売してました!

住宅雑誌「WAGAYA」が3月の始め

頃から本屋に並びだしました。

住宅を掲載する建築会社は直前に

何冊か頂けるのですが、

届いた雑誌を見てびっくり!!

なんと「早瀬の家」が表紙を

飾っているではありませんか!

編集担当の方からは事前に何も

聞いていなかったので、

嬉しいサプライズとなりました。

ちょうど「早瀬の家」では

補修や点検のタイミングだったので、

早速建て主さんに雑誌をプレゼント

させていただきました。

思い返してみると、一年前の今頃は

工事に入る前の基本設計や見積もりを

必死にこなしていました。

設計の過程で様々な変更はあったけれど、

芯の部分は変わらず何とか完成まで

漕ぎ着けたなぁと思います。

建て主さんや職人さんのおかげで。。

ペラペラとページをめくると、80ページ目に

掲載されていました。たったの4ページなので、

この住宅のことをすべてわかってもらうのは

難しいと半分位は諦めていたのですが、

中々素敵な感じです!

文章はできるだけ少なく、

写真はできるだけ大きく、

できるだけシンプルに。

写真屋さんにもしつこく粘り強くお願いした

甲斐があって、良い写真ばっかり!

みなさま、本屋さんにお立ち寄りの際は

ぜひチェックしてみてくださいね!

ちなみに4月頃に、

兄の瑞樹が担当した「葛原の家」が

別の雑誌に掲載する予定です。

そちらも合わせてチェックをお願いします!

 

葛西 瑞都

 
 

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「早瀬の家」のことを誌面にまとめる。

現在WAGAYAという住宅雑誌に掲載される

「早瀬の家」のページ校正を考えています。

「早瀬の家」は建物の端部に内庭という

外部空間があって、隣の部屋の様に

身近な距離感でつくることによって、

外に生活の場が広がっていく住宅です。

ブログでも、たくさんの文章や写真などで

ささいな部分までご紹介しましたが、

雑誌の中のたった4ページにまとめるのは

結構難しいもので、伝える部分と省く部分を

選ばなければなりません。(毎回の事ですが)

その作業のときに役立つのが設計の過程や

お打ち合わせの議事録だったりします。

僕がその時なにを考えていて、

それに対してクライアントさんは

どんなことを話したか。

一度始まりの地点まで立ち返ってみることで、

誌面に載せなければいけないポイントが

見えてくることがあります。

とはいえ初めて雑誌を手に取った人が

このページを見た時に、

僕が感じて欲しい感覚が伝わるか

やっぱりドキドキしてしまいますが。。。

大きな窓の向こうにもうひとつ部屋の様な

空間があって、木が植えられている・・・。

見た目にも使い方も内外が緩やかに繋がっていて、

この少し不思議な環境の中で

ご飯を食べたり遊んだり休んだり、

とてもありふれた日常が始まっている!

このワクワクする感覚が

少しでも伝わると嬉しいなぁ。

 

葛西 瑞都

 
 

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空間の感じ方に変化があること

今回は「本町の家」の内部について。

内部空間と同じ大きさの中庭が

寄り添っている建物なので

内部の各スペースも、

中庭がどう見えるか?とか

中庭からどう見えるか?とか、

頭の中で内と外を行ったり来たり

しながら考えました。

内部ではできるだけ様々な感じ方の

空間をつくろうとしています。

吹抜けで勾配屋根の迫力を感じられる

リビングや、小上がりで天井高さの低い和室、

中庭を間近に眺められるダイニング、

大きな窓からの光が充満する

2階の渡り廊下など。様々な性質の

居場所をつくると、

その場所の使い方や家族同士の距離感や

中庭との関係に多様性が生まれると

いつの間にか無意識に考えているようです。

多様性があると、想像していなかった

色々な楽しい出来事が

起こりそうだからでしょうか。。。

そしてこの「本町の家」で一番期待しているのは、

その多様性の中で内と外が混ざり合った

新しいライフスタイルが生まれることです。

天気の良い日に窓を全開すると、

外まで住空間がブワっと広がっていくような

感覚があって、いつの間にか

居間の続きとして庭で寛いだり、

子供が遊んだりするような感じです。

空で街と繋がっているこの中庭を、

まるで内部の様に感じたり使ったりできるならば、

物理的な建物の大きさや床面積なんていうものは

全然重要じゃないと考えています。

街角の交差点にひっそりと佇むこの住宅は

密かに街全体へ広がっていくんだ!

と信じて設計しています。

あ~、妄想は楽しいし、

妄想が現実になるのはもっと楽しいなぁ・・・。

 

葛西 瑞都

 
 

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「本町の家」

前回も少しご紹介した「本町の家」

の模型が完成して、ワクワクが納まら

なかったので、今回も

「本町の家」のお話です。

敷地は街の大通りから一本入った、

人通りも車通りも多い道路の一角にあり、

さらに細い道にも接している、

いわゆる二面接道の敷地です。

建物自体の設計以上に、

敷地にどのように配置するかが

大きな課題でした。

僕としては、住宅を道路からなるべく離して、

大きな窓はカーテンで閉じるような外観は

つくりたくありませんでした。

住人が周辺地域を信用していないような

雰囲気になるからです。

そこで、内部と同じ大きさの外部空間を持つ

住宅を提案しました。

住宅と街との間に大きな中庭を配置することで、

お互いの中間領域の様な空間をつくっています。

歩行者の空を狭くしないよう建物の高さを

極力抑え、屋根には大きく育った中庭の緑を

街と共有できるよう大きな開口を設けました。

住み手にとっては周囲からの視線や騒音を

気にすることなく、部屋着のまま庭にふらっと

出られるような安心感を。街にとっては

このお家がある事で、

いつの間にか少し風景が豊かになっているように。

派手な装飾や奇抜な形の「目立つ建物」ではなくて、

周辺と静かに調和しつつも

「際立つ建物」になれば良いと思います。

 

葛西 瑞都

 
 

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内部と外部を等価に考える。

久しぶりのブログになってしまいました。

さて、最近設計させていただく住宅は

実例のオープンハウスや掲載雑誌の

影響もあってか、中庭やテラスの様な外部空間と

室内とが流動的に繋がっている事が

多いような気がしています。

普段から建物だけではなく敷地や周辺環境に

対しても気を配っていますが、

内と外が繋がる空間の場合、

どのように接しているか、

その関係性自体の考え方から設計するように

しています。

そんな中、平川市で工事中の「本町の家」という

住宅は、少し今までとは違う関係性を考えていて、

今回はそのことを少し書いてみたいと思います。

「本町の家」は中庭のある家型の形をした

住宅です。

通常は庭やテラスなどの外部空間を

どう計画するか考える時、

先に内部のボリュームを考えて、

外部はそのボリュームの真ん中をくりぬいたり、

端に寄せたりして、

「内部に対してどう配置するか?」

と考えているですが、

「本町の家」では内部と外部の優先順位を

等価に扱って設計する事をテーマにしています。

敷地の中に全体の縁取りとなる壁を

ぐるっと廻して、その中の半分を室内、半分を

中庭にするという、とてもシンプルな考え方です。

同時に出来上がる内と外とに優先順位はありません。

そして内部はもちろんですが外部も内部と同じ位の

密度で設計しています。

例えばリビングを考えるようにコンクリート土間の

テラスのことを考えたり、家具の置き方を考えるように

植栽の配置を決めたり。

内外を同じ比重で考えてみると、なにかあたらしい概念で

家づくりができそうな、

楽しいことが起こりそうな気がしています。

あたらしい広さの感じ方のこと、

あたらしい家族同士の距離感を、

シンプルな構成でつくること。 

完成が楽しみです!

 

葛西 瑞都

 
 

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合言葉は「せっかくだから」

さて、「早瀬の家」は一段落し、建て主さんが

忙しく引越し中だそうで、後で住まい方を

見学させていただくのが楽しみです!

 

さて今回は、いつもやっていることですが、

模型写真と完成写真を並べて比べて、

感慨深く振り返ろうと思います。。。

 

と、あともうひとつ。

僕や兄の瑞樹が建て主さんと考えた家は、

いつも決まって造るのが難しいんです。

図面や模型を職人さんに見せただけで、

「大変そうだ・・・」

という心の声が聞こえてきます。

たまに肉声で聞こえますし。

 

実際に現場で作業するのは職人さん達なわけで、

たしかに気持ちはわかります。

でも、とびきりオーダーメイドの気持ち良い空間を

造ることは簡単なわけないので、

設計者は誰よりも強い気持ちで

みんなと向き合わなければいけません。

例えば階段を造るとき、難しくて大変な方法と、

簡単で楽な方法があるとして、出来栄えが変わるなら

難しくて大変な方法で造ってもらうしかありません。

 

そのときに僕にとって大事なキーワードが

「せっかくだから」。

職人さん達にとってはたくさんある現場のひとつなだけ

かもしれないけれど、

建て主さんにとっては一生の宝物になるわけで、

「せっかくだから、難しい方に!」

というのが何となく、

僕の芯になっている気がしています。。。

 

前置きが長くなってしましたが、模型写真と実物写真を

交互に掲載していきます。

風除室の木製外壁と木製建具も「せっかくだから」。

土間のセルフペイントも「せっかくだから」。

木の壁で仕上げた階段も「せっかくだから」。

アーチ型の出入口も「せっかくだから」。

「せっかくだから」キッチンは2本とも手造りで。

「せっかくだから」高い天井には木を張って。

「せっかくだから」勝手口は板張りに。

「せっかくだから」植栽はたっぷりと。あと飛び石も。

と、いろんなところに「せっかくだから」があります。

 

これからも、「せっかくだから」を

続けていきたいと思います。

せっかくだから。

 

葛西 瑞都

 
 

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ようこそ、「早瀬の家」へ!後編

前編の続きです!

階段を上がって2階へ。。。

階段を上がる途中、個人的に大好きな瞬間があります。

それはリビングの上部に架かっている梁を横目に

通り過ぎる瞬間。

下階から上階へ切り替わる感覚や、

小上がりサブリビング下部の誰のものでもない空間を

眺める感じがいいんです。

吹抜けに架かるサブリビングへの渡り廊下部分は、

梁の上にウッドデッキを敷いただけの簡単な造りです。

独特の浮遊感があって、歩くだけで少し楽しく感じます。

渡り廊下の向こうには全面開口で内庭と繋がるサブリビング。

床が60cm程上がっていて天井も高い、屋根裏部屋の様な

雰囲気を目指した場所です。それではサブリビングへ。

階段の途中、隙間から1階の内庭がちらっと見えます。

部屋の面積はそんなに大きくないのですが、凄い開放感!

床がラワン合板張り、天井がシナ合板張りの

シンプルな空間です。

2つあるバルコニーは渡り廊下と同じウッドデッキを

敷いてあります。

外壁でくるっと包んで、天井は低く抑えて、

外にある小さな部屋のようにつくりました。

テラスに出てみると・・・

1階にいる家族と楽しい繋がりが生まれそうです。

当たり前のことですが、2階建ての住宅は

1階にいるときには地面が近く、

2階に上がると空が近くなります。

「早瀬の家」では特にそれをつよく感じられます。

↓ちなみ1階から見上げた空はこんな感じです。

壁面の開口は風景を様々に切り取ります。


ということで長々とご紹介させていただきました。

オープンハウスに来ていただいた方はわかると

思いますが、やはり写真の持つ情報量は、

実体験にはかないません。

(僕の写真の撮り方のせいも多々ありますが)

でも、このお家の持つ気持ち良さそうな空気感

みたいなものは少しだけでも伝わったかな?と

思います。 

 

さぁ!これから始まる家づくりも頑張らなくては!

葛西 瑞都

 
 

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