「桜川の家」の色々。

来月4日のオープンハウスを目前に、
 
現場では色々な職人さんが必死に
 
作業しています。
 
少しだけ「桜川の家」のコンセプトを。
外観は白いハコにポッカリと大きな孔が空いていて、
十字の格子の様な柱と梁が見えています。
この孔の開け方は実はとても悩んだ末に
決められていて、
この住宅の設計を始めた時に
掲げたテーマでもあります。
 
それは「街とどう繋がるか」です。
 
密集した住宅地の中にあって、
向かいには人のたくさん集まる公園という
環境のなかでこの住宅が
どこまで広がっていけるか?ということです。
何も考えずに設計したら、プライバシーを守るために
外部を拒絶して内側だけで完結する建物に
なりそうだったので、何回目かのご提案で
この大きな壁に大きな孔が開いたプランを
ご提案しました。
僕はいつも「敷地境界線を越えたい」
と思っていますが、
この大きな孔によって内から外へ、
更には敷地を越えて街の方へ
広がっていくと良いなぁと考えました。
外から眺めても、家の中に少し街の環境が
続いている感じです。
 
少しだけのつもりが結構長文になりま
した。。 
 
先日この「桜川の家」に設置する階段の
部材を確認するために黒石市にある
鉄工所に行って来ました。
今回の階段は設計も製作もとても困難で、
はじめはまっすぐで途中から螺旋階段の様に
ねじれながら上がっていく形状です。
さらに全体が大きいため、いくつかに分けて
搬入し現場で合体させるという難しさ。
鉄工所の担当さんには苦労して
いただきましたが、
部材の完成品を得意気に紹介してくれて
嬉しかったです!
せっかく鉄を使うので、木やコンクリートでは
できない、鉄ならではのプロポーションに
したいと考えました。
廻りの壁から少し隙間を空けて、階段だけで
フワッと自立するシンボリックな存在になる
予定です。
おまけで風除室の入口になる鉄製のフレームも。
これからまだまだ塗装や左官の仕上げ、
壁紙工事など作業が続いていきますが、
終盤に向けて一気に加速していく現場。
 
いつも通り、もう少しで終わってしまう現場の
独特の寂しさを感じながらも進んでいきます!
 
葛西 瑞都
 
 

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途中の魅力

「桜川の家」は猛暑のなか、大工工事の真っ最中です。

工事中の現場にいるといつも独特の気持ちよさを感じます。
 
それはたぶん建築が持つ原初的な魅力だと思うのですが、
 
柱や梁や床下のコンクリートが見えている様子や、下から
 
見上げる屋根裏の様子など、「途中」だから生まれる雰囲気が
 
あります。
 
その「途中」ならではの良さについて。。。
完成後の様子はじっくりじ~っくり想像しながら設計するのに、
 
工事中の様子は以外に想像していないものです。
 
そんな中に隠れているお宝はたくさんあって、
 
例えば外部テラスに工事中だけ存在する足場。
 
2層吹抜けのテラスの空中に居場所がある様子は今だけの
 
特等席です。設計中は思いもしなかった居場所。
例えば外壁の下地になるモルタル塗りの様子。
 
あとで隠れてしまうけれど、左官屋さんの腕の見せ所。
 
無機質な廃墟の様に、荒々しいけれど静かな雰囲気が良い感じです。
 
内側から見るとまるで、コンクリートの古い廃墟の中に新しい建築を
 
つくったよう。
初めからあるものを残す部分と、仕上げる部分をきちんと考える。
 
というのは当たり前として、
 
さらに途中で見つけた要素を、新たにメンバーに加えて完成に向かう。
 
という工事現場になればもっと楽しい空間が生まれる予感がしています。
 
なので、工事中の現場と完成後のお家をわけないで、
 
おんなじ視点で見ています。
 
葛西 瑞都
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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「桜川の家」の設計から現場まで。

先月の末頃に「桜川の家」の上棟式が

行われました。

当たり前の事ですが建て主さんご家族も、

僕も、大工さん達も

初めて建ち上がる空間を共有するわけで、

骨組みの状態でも完成時のイメージを

膨らませることができました。

完成後リビングになる空間に

供え物を並べるのも貴重な楽しい体験でした。

ふと思い立って前の資料をあさってみると、

初めて僕がプランをご提案したのが

去年の6月。

気がつくと一年くらい設計していました。

「設計していた」というより、

「家のことをおしゃべりしていた」

と言う方がしっくりくるくらい

楽しい打ち合わせでしたが、

これから完成まではあっという間です。

設計が仕事の僕は、

せいぜい図面を描いたり、

模型を作ったり、

一緒に悩んだり、

一人で悩んだりするくらい。

実際に家族が触れたり歩いたり寝転んだりする

場所をつくるのはたくさんの職人さんです。

いつも通り、造るのに手間は掛かるし技も

要るし大変なお家だけれど、

最後まで一緒に

あがいてもがいていかなければ!

と思っています。

現在現場は大工さんが奮闘中。

今までに造ったことのないお家を

造るのですから小さな課題が山の様にあって、

大工さんの経験に頼りながら

乗り越えていきます。

「課題がある」なんて、

なんて素敵な家づくりでしょうか。。。

完成は9月の初め。

まだまだこれからが本番なので、

楽しみながら進んでいきたいと思います!

 

葛西 瑞都

 
 

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引き算のデザイン。

近年急増している空き家の問題。地元の市町村でも何かと

対策が講じられているようですが、

人が減っていくこれからのことを

僕なりに少し考えてみることにしました。初めて。

 

僕の働く会社は建築会社なので、建築をつくることが専門です。

ほとんどの場合が更地に建物をつくったり、

もしくは今住んでいるお家をもっと長い間快適に暮らせるように

手を掛けてあげることが僕の仕事です。

 

そんなわけで、僕が普段持っている感覚は足し算です。

更地の敷地をゼロと捉えて新たにつくるのも足し算で、

既存の建物を改修するときも足し算。

街の視点から見ても、空いている隙間を埋めるように

建築物で埋めていく、足し算です。

 

でもこれから多分僕達は、

引き算のことも考えていかなければいけない。

建築はいつも「人」がいてはじめて求められるもので、

その「人」がどんどん減っていくということは

街からどんどん建築が減っていくということです。

建物をつくる足し算のときは赤ら顔で一生懸命

デザインするのに、

いざ引き算になると知らんぷりだとダメですよね?

 

じゃあ引き算のデザインってなんだろう?

例えば、思い切って床の面積を減らしてみましょう!

総2階建ての大きな古いお家って、結構見かけます。

住み手に対して部屋の数(床面積)が過大なので、

1、2階とも、半分くらい床を取り払って

外壁と屋根だけにしちゃいましょう!

断熱や仕上げも無し。そこを外部として、

残った内部との間に断熱材や大きな窓を。

外部の屋根や壁には好き勝手に開口を開けて、

半屋外の大きなテラスに!

内部空間が減るので空調負荷も減少。

家族だけの外部空間がいきなり出現するわけです。

 

これはほんのアイデアのひとかけらみたいなものですが、

これが専用住宅だけではなく、

例えば空室の多いアパートなんかの場合は住人同士が

共有できる庭や菜園をつくって建物自体に付加価値を生んだり、

商業ビルなんかは2,3枚床を抜いて壁も取り払うことで、

街から直接アクセスできるようなアクティビティをつくったりできます。

 

今までの建物を、これからの人数に合わせて引き算していく。

そこを上手く楽しくデザインできれば、「少子化」とか「空き家」とか

一見ネガティブに感じるいまの状況も、なんだかワクワクする

可能性が感じられてくると思うのです。

 

葛西 瑞都

 
 

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「桜川の家」について

確認申請も無事に通って建築工事が 
 
 
 
始まったばかりの「桜川の家」を紹介します。 
敷地は廻りに新旧様々な家が建ち並ぶ 
 
住宅地にあって、道路を挟んだ向かいには
 
開放的な公園があります。
 
 
敷地を訪れるといつもたくさんの子供達が遊んでいて、
 
大きな広場や大きな植栽があったりする、
 
とても良い雰囲気の公園。。。
 
 
設計する中でその都度大なり小なりの変更が
 
あったけれど、いつもこの公園や近隣の環境を
 
どうやって取り込んだり、
 
もしくは距離感をとったりするかが大きなテーマでした。
 
公園の気持ち良い環境を取り込むためには
 
ある程度大きな窓をバーンと設けたい。でも、
 
たくさんの人が集まる公園や、
 
道路からの視線を遮る壁も欲しい。
 
対称的な課題をどうにかクリアできないかと検討した結果、
 
大きなテラスを建物に内包させることで
 
これらの課題をクリアしました。
 
家族が集まる空間と外部との間に
 
2層吹き抜けのテラスを設けて、外側の壁によって
 
外部の視線や騒音をコントロールします。
 
内部では大開口で外部と開放的に繋がり、
 
向こうの公園の木々や広い空を存分に
 
取り込めるようにしました。
外観についても考えていることがあります。
 
ふつう建物は壁一枚で内部と外部が
 
はっきり分かれていることが多く、
 
外観には内部を包むための外壁だけが現れてきますが、
 
この「桜川の家」では、大きなテラスによって内と外の間に
 
少しグラデーションが生まれています。
 
四角いハコに大きな開口があって、
 
その向こうにはまた外がある、
 
街が少し建物の中に入り込んでいる印象です。
完成は八月。気を引き締めて頑張ります!
 
 
葛西 瑞都
 
 

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暮らすことのセンス。

メンテナンスの為に2012年に完成した「中野の家」へ行って来ました。

あえて少し離れた場所に車を置いて、

設計当時を思い出しながら歩いていきます。

一枚目の写真は「中野の家」の裏側。

ホームページや雑誌では正面の写真を良く使っていましたが、

実は裏側にかなり気を使っています。

というのも、裏側にはスーパーマーケットの駐車場があって

この「中野の家」はとても目に付きやすい位置にあるからです。

いつも通り、外観から間取りがわからないように注意して

窓の配置を決めています。

敷地に入ってから建物までの、ゆったりしたアプローチ。途中で

大きな庭や薪小屋を横目に追い越します。

庭にはポツポツとシンボルツリーのように桜の木がありました。

もう少しすると花が咲くそうです!

中へお邪魔すると、もうすっかり主役になった薪ストーブが

「おっ久しぶり」という感じでお出迎え。

この春から小学生になる娘さんや、去年生まれた息子さんのおかげで

たくさんの物がそこここにあって、

家がきちんと生活の器になれてる!と感じました。

「床と壁と屋根でできた、はっきりとした形のある建築」と

「親と子供達でつくられる、形なんかない日常の暮らし」が、

とっても気持ちよく混ざり合った良い空間になってました!

一応形式上はメンテナンスの下見だったのですが、僕は終始

「良い感じですね~」ばっかり。美味しいコーヒーまで頂いて。。。

その時僕は、

「この建て主さんは暮らすセンスが良いんだろうなぁ」

と考えていました。

センスというと洋服選びとか音楽の事とかが頭に浮かびますが、

暮らすセンスというのは、建築やその外部環境も含めて

「楽しく生活するセンス」です。

高級な家具や生活用品に囲まれた生活をよく「ハイセンス」とか

言いますが、僕としてはこの暮らしこそがハイセンス。

モチベーションもグワっと回復したし、今年のプロジェクトも

ドキドキワクワクしながら頑張ってまいります!!!

 

葛西 瑞都

 

 
 

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住宅雑誌「WAGAYA」が発売してました!

住宅雑誌「WAGAYA」が3月の始め

頃から本屋に並びだしました。

住宅を掲載する建築会社は直前に

何冊か頂けるのですが、

届いた雑誌を見てびっくり!!

なんと「早瀬の家」が表紙を

飾っているではありませんか!

編集担当の方からは事前に何も

聞いていなかったので、

嬉しいサプライズとなりました。

ちょうど「早瀬の家」では

補修や点検のタイミングだったので、

早速建て主さんに雑誌をプレゼント

させていただきました。

思い返してみると、一年前の今頃は

工事に入る前の基本設計や見積もりを

必死にこなしていました。

設計の過程で様々な変更はあったけれど、

芯の部分は変わらず何とか完成まで

漕ぎ着けたなぁと思います。

建て主さんや職人さんのおかげで。。

ペラペラとページをめくると、80ページ目に

掲載されていました。たったの4ページなので、

この住宅のことをすべてわかってもらうのは

難しいと半分位は諦めていたのですが、

中々素敵な感じです!

文章はできるだけ少なく、

写真はできるだけ大きく、

できるだけシンプルに。

写真屋さんにもしつこく粘り強くお願いした

甲斐があって、良い写真ばっかり!

みなさま、本屋さんにお立ち寄りの際は

ぜひチェックしてみてくださいね!

ちなみに4月頃に、

兄の瑞樹が担当した「葛原の家」が

別の雑誌に掲載する予定です。

そちらも合わせてチェックをお願いします!

 

葛西 瑞都

 
 

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「早瀬の家」のことを誌面にまとめる。

現在WAGAYAという住宅雑誌に掲載される

「早瀬の家」のページ校正を考えています。

「早瀬の家」は建物の端部に内庭という

外部空間があって、隣の部屋の様に

身近な距離感でつくることによって、

外に生活の場が広がっていく住宅です。

ブログでも、たくさんの文章や写真などで

ささいな部分までご紹介しましたが、

雑誌の中のたった4ページにまとめるのは

結構難しいもので、伝える部分と省く部分を

選ばなければなりません。(毎回の事ですが)

その作業のときに役立つのが設計の過程や

お打ち合わせの議事録だったりします。

僕がその時なにを考えていて、

それに対してクライアントさんは

どんなことを話したか。

一度始まりの地点まで立ち返ってみることで、

誌面に載せなければいけないポイントが

見えてくることがあります。

とはいえ初めて雑誌を手に取った人が

このページを見た時に、

僕が感じて欲しい感覚が伝わるか

やっぱりドキドキしてしまいますが。。。

大きな窓の向こうにもうひとつ部屋の様な

空間があって、木が植えられている・・・。

見た目にも使い方も内外が緩やかに繋がっていて、

この少し不思議な環境の中で

ご飯を食べたり遊んだり休んだり、

とてもありふれた日常が始まっている!

このワクワクする感覚が

少しでも伝わると嬉しいなぁ。

 

葛西 瑞都

 
 

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空間の感じ方に変化があること

今回は「本町の家」の内部について。

内部空間と同じ大きさの中庭が

寄り添っている建物なので

内部の各スペースも、

中庭がどう見えるか?とか

中庭からどう見えるか?とか、

頭の中で内と外を行ったり来たり

しながら考えました。

内部ではできるだけ様々な感じ方の

空間をつくろうとしています。

吹抜けで勾配屋根の迫力を感じられる

リビングや、小上がりで天井高さの低い和室、

中庭を間近に眺められるダイニング、

大きな窓からの光が充満する

2階の渡り廊下など。様々な性質の

居場所をつくると、

その場所の使い方や家族同士の距離感や

中庭との関係に多様性が生まれると

いつの間にか無意識に考えているようです。

多様性があると、想像していなかった

色々な楽しい出来事が

起こりそうだからでしょうか。。。

そしてこの「本町の家」で一番期待しているのは、

その多様性の中で内と外が混ざり合った

新しいライフスタイルが生まれることです。

天気の良い日に窓を全開すると、

外まで住空間がブワっと広がっていくような

感覚があって、いつの間にか

居間の続きとして庭で寛いだり、

子供が遊んだりするような感じです。

空で街と繋がっているこの中庭を、

まるで内部の様に感じたり使ったりできるならば、

物理的な建物の大きさや床面積なんていうものは

全然重要じゃないと考えています。

街角の交差点にひっそりと佇むこの住宅は

密かに街全体へ広がっていくんだ!

と信じて設計しています。

あ~、妄想は楽しいし、

妄想が現実になるのはもっと楽しいなぁ・・・。

 

葛西 瑞都

 
 

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「本町の家」

前回も少しご紹介した「本町の家」

の模型が完成して、ワクワクが納まら

なかったので、今回も

「本町の家」のお話です。

敷地は街の大通りから一本入った、

人通りも車通りも多い道路の一角にあり、

さらに細い道にも接している、

いわゆる二面接道の敷地です。

建物自体の設計以上に、

敷地にどのように配置するかが

大きな課題でした。

僕としては、住宅を道路からなるべく離して、

大きな窓はカーテンで閉じるような外観は

つくりたくありませんでした。

住人が周辺地域を信用していないような

雰囲気になるからです。

そこで、内部と同じ大きさの外部空間を持つ

住宅を提案しました。

住宅と街との間に大きな中庭を配置することで、

お互いの中間領域の様な空間をつくっています。

歩行者の空を狭くしないよう建物の高さを

極力抑え、屋根には大きく育った中庭の緑を

街と共有できるよう大きな開口を設けました。

住み手にとっては周囲からの視線や騒音を

気にすることなく、部屋着のまま庭にふらっと

出られるような安心感を。街にとっては

このお家がある事で、

いつの間にか少し風景が豊かになっているように。

派手な装飾や奇抜な形の「目立つ建物」ではなくて、

周辺と静かに調和しつつも

「際立つ建物」になれば良いと思います。

 

葛西 瑞都

 
 

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