ダイニングテーブルと2脚のベンチ。

「旭ヶ丘の家」の造作家具のひとつに、

ダイニングテーブルと2脚のベンチがあります。

今回は階段や手すりなどに鉄を使っているので、

テーブルとベンチにも鉄を使ってみませんか?と

建て主のご夫婦にお話したところ、 2つ返事でOKを

頂いたので張り切って設計させていただきました。

 

せっかく鉄を使うので、鉄でしかつくれない

プロポーションが良いなぁ。。。という感じで

早速鉄骨屋さんと相談。手すりには丸い断面を

使いましたが、座面や天板が付く家具には

四角い断面の方がいいだろうとのこと。

3センチ角の鉄パイプでシンプルなフレームを

組んで、それに建具屋さんが天板と座面を

取り付けて完成しました。

テーブルの大きさはおよそ畳1枚分。真横から

見るとわかりやすいのですが、天板の大きさに

比べて厚みがとても薄い。。。鉄の強度があって

初めてつくれるプロポーションです。

そしてもうひとつ重要なことがあって、それは

成り立ちが明快でわかりやすいということ。

誰が見ても

「鉄のフレームに木の板が乗っているだけ。」

ということがわかります。

何か余計に厚みをつけて、隠れた内部で

細かな細工をしたりすると、成り立ちとしての

透明感が無くなってしまう様な気がしています。

(つくる方からすればつくりやすいのですが。)

なので精度も手間も必要な方法をあえて

選択しました。

 

ちなみにテーブルセットが置かれるのはここ↓。

建築の一部である手すりと、

家具であるテーブルとベンチ。

建築とか家具とかジャンル分けしないで

空間をつくる要素として、同じように考えてみると、

何だかまだまだ楽しい発見がありそうです。

 

葛西 瑞都

 

 

 
 

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カメレオンの様な扉。

現在仕上げ工事の真っ最中の「旭ヶ丘の家」

ですが、ちょっと面白い建具があります。

テーマは擬態。

一つ目はこの木製の壁面に造られた小さな扉です。

壁面にいきなり切れ込みが入って、カパッと

開いてしまうようなイメージ。

ブロンズの小さな取手と蝶番が付いています。

中にはインターホンのモニターと玄関ドアの

施錠を遠隔で操作するリモコンが仕込まれています。

こんなメカニックな物が丸見えにならないよう、

大工さんにひと頑張りしてもらいました。

 

そしてもうひとつは、キッチン背後のデコボコした

木製の壁面に造られた2つの扉です。

こちらの扉にはもはや取手すら無く、

壁の一部分がペコッとへこんでいるだけ。

これでも、ちゃんとした扉なのです。

左の扉はトイレやお風呂などの水廻りへ。

右の扉は食品庫へ続いています。

この壁面には大きな目地が入っているのですが、

壁面の目地と建具の目地がピタッと揃っています。

(本当に素晴らしい職人技!)

その目地に指を掛けて扉を開ける。。。

感覚としては、扉を開けるというよりも

壁をずらしているような、不思議な感じです。

元々この扉は「扉」っぽくないように、「壁」っぽく

造ることを考えてはいましたが、現場で実物として

実現させてしまう職人さんは本当に凄いです。

特に今回は、壁材を張る大工さんと、建具を造る

建具屋さんとの協力による合作!

見事な擬態が完成しました。

以上、カメレオンの様な2種類の扉のご紹介でした!

 

葛西 瑞都

 

 
 

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模型と現場。

現場が終盤近くになってくるといつも、

「始めの感覚に立ち返ってみる」という

ことをしています。

 

「始めの感覚」っていうのは、まだ現場が

始まる前の設計中に思い描いていた

イメージなんかを、建て主のご家族とお話

していた頃の感覚。

設計という仕事は現場が進むにつれて、

いつしかその感覚が薄れて現場の都合や

数字、数量、工期のことばかりに

気をとられてしまいがちになってしまいます。

なので、きちんと最初に思い描いた所に

着地しているか、毎回確認しています。

↓まずは模型から。

↓続いて現場写真。

途中で問題にぶつかって悩むことも多々ありましたが

・・・なんとか、着地できたような気がします。。。

 

葛西 瑞都

 
 

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「旭ヶ丘の家」近況報告&オープンハウスです!

「旭ヶ丘の家」では鉄製の手すりや階段に

からむ大工工事の真っ最中です。(3月6日現在)

1枚80キロある階段のささら桁を5~6人掛かりで

据え付けるのですが、床や壁と取り合う部分は

シンプルな見た目にしようとすると細かな細工が

必要になります。力仕事と精度の両方を要します。

現場はまるで部活動の様な熱い雰囲気でした。

厚さ9ミリ、幅200ミリの薄っぺらい鉄板が

5メートル以上もの距離にわたってフワッと

掛けられています。せっかく鉄を使うので鉄でしか

造れない空間を考えたのですが、組み上がってみると

やっぱり良いです!色は艶を抑えたブラック。

いかにも鉄らしい、スマートな階段です。

そして今回は手すりも鉄で製作しています。

ブログの方でも少しご紹介していますが、

この手すりも床や壁との取り合い部分をシンプルに

するために細工してもらっています。

例えば床の部分。固定用のプレートを隠したいので

この上からフローリングを敷いていきます。

フローリングもちょうど目地が手すり部分にくる

ようにして、2枚のフローリングで挟み込むように

敷いています。

細い鉄の手すりがスッと立つ良い感じの

佇まいになりました。他の人が見ても、普通に

床に手すりが付いてるなぁ。としか思わないかも

しれないけれど、固定用のプレートが丸見えだったら

このプレート邪魔だなぁ。と感じるはず。

そんな隠すための小さなデザインです。見た目には

わからないけど、職人さんの手仕事の跡が残る仕事。

さてさて現場はこれから仕上げ工事。木や鉄に色を

塗ったりタイルを敷いたり壁紙を貼ったり設備機器を

据え付けたりと、最後の追い込みが始まります。

そして、22日、23日にはオープンハウスも開催します!

建て主の悩ましくも楽しい葛藤の様子や職人さんの

手業の凄さを感じていただけたら嬉しいです。

(毎度のことですが、設計の頑張りも少しだけ・・・)

 

葛西 瑞都

 
 

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「旭ヶ丘の家」鉄骨階段の工場見学と現場の完成度。

「旭ヶ丘の家」では階段と手すりに

鉄骨の部材を使います。

ということで、階段部材の仕上がりを

確認するため工場見学へ。。。

全長にして5.5mにもなる、階段の踏み板を

支える「ささら桁」という部材です。

ふだん僕達が見かける鉄骨はきれいに塗装

されたキレイな仕上がりですが、工場では

せん断加工の跡や溶接の様子、寸法や

注意点のメモ書きが残る、無垢な状態を

見ることができました。

それにしても、こちらが描いた図面を製作用に

起こして、それを現実につくってしまうのは

やっぱりすごいし格好良いですね。。。

この鉄骨階段の他に手すりの製作もお願い

しているのですが、仕上がりが楽しみです!

あと、現場の完成度について。

大抵僕が考えるデザインは、難しくて

面倒で大変なことが多いです。

というかそもそもムリじゃない?と

いうことも少なくありません。

1つ新しいことをしようとすると、10個位

問題や課題が発見される気がします。

そんなことを答えの出ないまま職人さんに

相談してみるのですが、いつも職人さん側

のアイディアに救われています。

「ふつうの何倍も手間が掛かるけど、

仕方ねぇしな」という感じ。 感謝です。。。

 

そしてこの鉄骨部材のデザインでも、本当に

鉄骨屋さんや大工さんを悩ませました。 

手すりを立てるとき、足元をシンプルにする

ためにフローリングを敷く前に手すりを立てて

固定部分を隠すのですが、その手すりの一部

が木製階段にかかっています。

先に階段を組上げて踏み板の裏側から

手すりを固定する必要があるけれど、

フローリングを敷かないと階段が造れない。

でもフローリングを敷く前に手すりを立てたい。

こんな難題がたくさんです。↓この手すりです。

こんな風に難しくて面倒で大変なことを

ひとつひとつ乗り越えていきます。 

何十年も住むお家のことを一瞬の判断で

決めていくときに、後悔の無いようにしたい。

そんな個人的な感覚を、職人さんと共有

しながらつくっていきたいです。

 

葛西 瑞都

 
 

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「旭ヶ丘の家」現場の様子。

工事が着々と進む「旭ヶ丘の家」、

現場の色々な場面です。

↑リビングの下にある、天井高さが1.9m位の

ウォークインクローゼット。

↑主寝室①

↑主寝室② 大きな窓からテラスへ出られる。

テラスの向こう側は庭、そして崖。

↑まだ壁がないので、向こう側まで視線が通る。

↑土間から見上げると、仮設の床がリビングの

上部に作られています。

↑2階の床より1m位低いリビングの床面。

↑2階にある、景色を一望できる浴室。

↑2階のダイニングと、その奥のテラス。

↑ぎゅうぎゅうの断熱材。

↑電気業者さんのメッセージ。

 

色々な職人さんが一人残らず四苦八苦しながら、

一生懸命頑張っています。。。

 

葛西 瑞都




 
 

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「旭ヶ丘の家」近況報告と仕上げの話。

弘前市の街並みを一望できるがけ地に建つ

「旭ヶ丘の家」は、現在大工さんと四苦八苦

しながら現場が進んでいます。

これから何十年も家族が暮らすお家の

骨組みが見える今のタイミングは、

貴重であり楽しくもあります。

住み始めてからは中々見られない部分

だけど、建物を支える一番基本的な構造体。

柱の一本一本に手書きで番号が書かれて

いたり、木材同士を緊結する金物が付いて

いたり、屋根裏には上棟式で飾った家内安全を

意味する御幣(ごへい)や、ワラジが結ばれて

いたり、いかにも木造の家らしい光景が

広がっています。

そんな現場を見ながら将来の暮らしを妄想したり

新しいアイディアを発見したり、、、。

ジャングルジムの様にそこかしこを行ったり来たり

しながら楽しく悩んでいるところです。

さてそんな骨組み状態の「旭ヶ丘の家」ですが、

仕上げにはたくさんの種類の材料が使われます。

スベスベした木を使うリビングの壁、ゴツゴツした

木を使うダイニング・キッチンの壁、ヒバの板材を

張る浴室の壁、墨で着色したモルタルの土間、

四角いタイルを敷いた土間、無垢のオークフローリング、

ウリンという硬い木でつくるウッドデッキ、洗面台には

小さなかわいいモザイクタイル、大きな造り付けの

建具には滲んだスリガラス、ステンレス製のキッチン、

鉄の階段と手すり。。。

色も手触りも様々な素材達が混ざり合った空間は、

時間の経過とか思わず付いてしまうキズや汚れとか、

色んなものを受け入れてきっと愛着のあるものに

なると思います。

スキップフロア形式なので床の高さも天井の高さも様々、

使われる素材も様々、たくさんの「様々」がぎゅっと

ひとつに合わさって、どんな仕上がりになるのか?

やり直しのきかない建築だからこそ、思いっきり積極的に

家をつくる!ということが大事なのではないかと思います。

あ~こりゃまた建て主のNさんに似合うお家に

なっちゃうんだろうなぁ~~~。

 

葛西 瑞都

 
 

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「旭ヶ丘の家」上棟式

つい先日、「旭ヶ丘の家」の上棟式が

行われました。週間天気予報で毎日

大雪マークだったのですが、なぜか

この日だけは天気も良いし気温も高い!

きっとこれは何かのおぼし召しに違い!!

と、テキパキ組み上がりました。

頭の中で思い描いていた空間が実際に

組み上がる光景というのはすごいもので、

なんだかとてもワクワクしてしまいます。

スキップフロアの複雑な構成なはずなのに、

大工さんはどんどん組み上げていきます。

屋根の構造までひと通り組み上がったところで、

少し早めの時間から上棟式を行いました。

建物の四隅の柱に米・塩・酒・水をかけて

工事の無事と成功を祈願しました。

上棟式の後は建て主さんと一緒に現場見学。

弘前の街や遠くの山並み、空、足元の森林、

「うわぁ~やっぱり良い景色ですね~」と

外を見て盛り上がり、

「キッチンから見ると子供たちのスペースが

思ったより近くて良いですね~」と

中を見て盛り上がり、

子供たちも少し怖がりながらも

「ここは私の部屋ぁ!」と盛り上がり。

とても楽しい時間を共有することができました。

 

つくづく思った事は、僕にとっての設計という

のはほとんど建て主さんとの繋がりみたい

なもの、それだけなんですね。。。

数字や寸法から、暮らしのことはなにひとつ

決められないけれど、

家族がどんな風に使うだろうか?と考えて

みるといくらでもアイディアが浮かんできます。

そんな大なり小なりのアイディアについて、

建て主さんとしつこく楽しく話し合って、、、

そんな過程を経て建つ家は、なんというか

その家族にとってしっくり馴染んでいる楽しい

住まいになると思っています。

 

あぁ、建物が完成してから一ヶ月くらい居候して、

どんな暮らしなのか体験できればいいのに。。。

 

葛西 瑞都

 
 

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妄想。

当たり前なのかもしれませんが、僕達は色々

な人の居場所のことを考えます。じゃあその

人やそのご家族にとって居心地の良い居場所

のことをどうやって考えるか?

僕の頭の中のことを少しお話しすると、実は

色々な人の中に憑依しています。

と言うと少し不気味ですが、要はその人に

なりきって、色々妄想しています。

その妄想をするためには住む人との会話が

多分すごく重要で、なんとなくこちらとの間に

バリアを張って、距離感のある人の場合は中々

妄想できません。(子供が間に入ってバリア

を軽々と壊してくれる事が多くて助かります)

逆にガバッと心を開いてくれる人の場合は、

普段の生活が目に浮かぶように想像できます。

するとなんとなく設計の内容も変わってきて、

なんというか、味のある中身の詰まった建築

になっていくような気がしています。大切な

のはお互いの心の壁を取り払って、根っこの

部分で対話する事です。そこが上手くいって

いればもう良い家ができたの同然。できるに

決まっているんです。数字や寸法、数値より

もわかりやすい「感覚」を共有しながら、家

づくりができればいいと思っています。

 

・・・となると、僕の仕事は何でしょうか?

妄想が大事な仕事?なんとも不思議ですが、

これからもモンモンと妄想してまいります。

 

葛西 瑞都

 
 

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雑誌掲載のこと。

前回「中野の家」を掲載させていただいた

「wagaya」という住宅雑誌に、今年も掲載

することになりました。しかもなんと今回は

「女鹿沢の家」と「平岡の家」のダブル掲載!

↓女鹿沢の家

↓平岡の家

またいつも通り写真のレイアウトや文章などの

構成から決めさせていただいて、3月の始め頃

に店頭に並ぶ予定です。お店で見かけたときには

手にとってみて下さい!

 

あと、去年の年末に「平岡の家」の建て主さんに

雑誌掲載のお知らせをしに行ったのですが、

あまりに楽しそうに住まわれていたので思わず

「写真撮っていいですか?」とお願いしちゃいました。

クリスマスの飾り付けと芝生色の家具達。

梁には手作りのブランコ。(ロープの結び方は

帆船資料から調べたそう!何だかワンピースの

ガレーラカンパニーみたいです!!)

小さな窓にどかんと陣取るポテトヘッドさんを

はじめ、色んなところにいるおもちゃ達も

すっかりお家に馴染んでいます。

ここまで楽しそうに住みこなしてもらえたら、

つくり手としてはこれほど嬉しいことはありません。

僕が設計時に思い描いていたイメージなんて

簡単に飛び越えてしまう「楽しく暮らす」力に

完敗です。。。

ああ、なんで建築雑誌は新築のピカピカ写真

ばっかりなんだろう。住み始めて2年後くらい

の、「ちょっとだけ古い住宅特集」みたいな雑誌

があればいいのになぁと思います。。。

 

葛西 瑞都

 

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