「清原の家」について

ホームページの新調に時間が掛かり、久しぶりの更新に
なってしまいました!
今年は着工するプロジェクトが多く、ブログでご紹介したい
ことがたくさんあるので頑張って更新してまいります。
今回は去年から工事が始まっている「清原の家」について
書きたいと思います。
 
 
この住宅の敷地は一面が車道、一面が遊歩道、他の2面が
隣家に接していて、遊歩道側の接道長さは26mもありました。
この遊歩道と建物との関係が
難しい大きなテーマになっていて、
日当たりの良い遊歩道側に大きな窓をつくりたいけれど
歩行者の視線が気になってカーテンが
閉めっぱなしになると気持ち良くないし、
歩行者側もなんだか気を使ってしまう。
かといって窓をつくらずに閉ざした外観になるのは、
周辺環境を拒絶した閉鎖的な建ち方になってしまう。
 
 
色々と検討しているうちに、内部と外部の間に大きな縁側を
つくり、さらに外側に細かな木製ルーバーで柔らかく仕切る
案が生まれました。
 
↓遊歩道側から外観を見る。
思いつきの原点は昔から日本家屋と馴染み深い「簾(すだれ)」です。
すだれはある程度の日当たりを確保しながら、外からの視線を遮り
内からの視線は遮らないという特徴があります。
(しかも風通しも良く、隙間を通る風は温度が下がるので夏に涼しい!)
 
内と外の間に大きな縁側と「すだれ」の様な木製ルーバーを
挟み込むことで実際以上の距離感をつくりだして、
住まい手の暮らしの快適さを確保しようと考えています。
 
↓居間から遊歩道側を見る。 
LDKは縁側と同じ幅のおおらかなワンルームになっていて、
2階の床を支える梁や、林立する柱をそのまま現しとしています。
 
↓ダイニングからリビングを見る。

ダイニングテーブルは天板をキッチンと柱で支えて、脚の無い形状に。

2階は吹き抜けに面してずらっと渡り廊下が通っていて、各寝室が
並んでいます。
↑2階を外してLDKを見下ろしています。
内部と縁側の距離感がとても近いので、ふっと隣の部屋に行く感覚で
使えそうです。木製ルーバーは一部ガラッと開閉するようになっていて、
縁側から直接庭に出ることもできます。
縁側に家具を置いて室内の様に使うのも良さそうだし、植物を並べて
庭の様に使うのも気持ち良さそう。。。
 
そんな「清原の家」はいよいよ今月の12日には建て方です!
3月の完成に向けて頑張ってまいります!
 
葛西 瑞都
 
 

鉄の階段 工場の精度と現場の精度

前回少し紹介した「桜川の家」の鉄の階段。

先日現場での取り付け作業が行われました。
現場には大工の棟梁と副棟梁の兄弟。あと
鉄工所の製作を担当してくれた人達。 
無力な僕は端っこでそわそわ。
いよいよ始まります。。。
取り付ける部材の順番や運び方などの
段取りを全員で確認します。
この階段は数段上がってから
左側にカーブしてUターンしていく
形状なのですが、まずは内側の部材から。
3本の棒状の部品は設置完了までの補強用。最後に取り外します。
廻りながら上がっていく部分は、鉄の丸いパイプをカットして
作られました。
こんな形状は普通の作図ソフトでは描けません。すごい!
内側の部材はとりあえず設置完了です。
次は外側の部材の上半分!
内側の部材の円の中心と、外側の部材の円の中心を
合わせて確認します。さらに続いて下半分。
 
工場で完璧な精度で作られたこの6mmの鉄板は、
全ての部材を合体させるまでは
たわんでいたり反り返っていたり、とても不安定です。
プラモデルの様に簡単にはいかなくて、
職人さん達の経験と知識で乗り越えなければいけません。
 
踏み板が載った時に水平になるように。
踏み板の幅が最初から最後まで等しくなるように。
直線、曲線が美しくでるように。
 
「階段」というものに求められる当たり前の性能を実現するために、
現場では相談と調整が続きます。
製図すら困難なこの階段部材を図面通りに製作する鉄工所の精度。
 
グワングワンと動く部材達を図面通りに現場に取り付ける現場の精度。
 
改めて建築の職人さん達は凄いなぁ~と、ずっと口が半開きでした。
そしてやっと完了!
外に出て休憩しながら
「あ~マジで大変だったぁ!」
とタバコと缶コーヒーで一服している皆さんの格好良い事!
 
ということで、あとは踏み板を置いて手すりを付けて完成となります。
 
2階まで軽やかに昇降できるよう浮遊感を出すために
壁との間に少し隙間を開けて、階段を支える柱なども無いデザインです。
たくさんの職人さんの努力と、僕の応援(笑)によってつくられました。 
 
オープンハウスではぜひ実物をご覧になっていただければと思います!
 
葛西 瑞都
 
 
 
 
 
 

「桜川の家」の色々。

来月4日のオープンハウスを目前に、
 
現場では色々な職人さんが必死に
 
作業しています。
 
少しだけ「桜川の家」のコンセプトを。
外観は白いハコにポッカリと大きな孔が空いていて、
十字の格子の様な柱と梁が見えています。
この孔の開け方は実はとても悩んだ末に
決められていて、
この住宅の設計を始めた時に
掲げたテーマでもあります。
 
それは「街とどう繋がるか」です。
 
密集した住宅地の中にあって、
向かいには人のたくさん集まる公園という
環境のなかでこの住宅が
どこまで広がっていけるか?ということです。
何も考えずに設計したら、プライバシーを守るために
外部を拒絶して内側だけで完結する建物に
なりそうだったので、何回目かのご提案で
この大きな壁に大きな孔が開いたプランを
ご提案しました。
僕はいつも「敷地境界線を越えたい」
と思っていますが、
この大きな孔によって内から外へ、
更には敷地を越えて街の方へ
広がっていくと良いなぁと考えました。
外から眺めても、家の中に少し街の環境が
続いている感じです。
 
少しだけのつもりが結構長文になりま
した。。 
 
先日この「桜川の家」に設置する階段の
部材を確認するために黒石市にある
鉄工所に行って来ました。
今回の階段は設計も製作もとても困難で、
はじめはまっすぐで途中から螺旋階段の様に
ねじれながら上がっていく形状です。
さらに全体が大きいため、いくつかに分けて
搬入し現場で合体させるという難しさ。
鉄工所の担当さんには苦労して
いただきましたが、
部材の完成品を得意気に紹介してくれて
嬉しかったです!
せっかく鉄を使うので、木やコンクリートでは
できない、鉄ならではのプロポーションに
したいと考えました。
廻りの壁から少し隙間を空けて、階段だけで
フワッと自立するシンボリックな存在になる
予定です。
おまけで風除室の入口になる鉄製のフレームも。
これからまだまだ塗装や左官の仕上げ、
壁紙工事など作業が続いていきますが、
終盤に向けて一気に加速していく現場。
 
いつも通り、もう少しで終わってしまう現場の
独特の寂しさを感じながらも進んでいきます!
 
葛西 瑞都