「早瀬の家」の骨組み

鶴田町に建つ「早瀬の家」は、

いよいよ骨組みが組み上がりました。

はじめ大工の棟梁と模型を交えて話し合った時、

棟梁が模型を見ただけで

このお家の難易度を見抜いて、

「こりゃまた大変そうだ!」

と開口一番話したのを覚えています。。。 

現場では大工さん達が格闘中。

ただでさえ複雑なスキップフロアで

組むのが難しいのに、更に柱や梁などの構造部分が

完成後もそのままインテリアに現れるので

キズが付かないように注意が必要です。

大事なのは大工さん達の経験とアイディアと判断力!

図面通り、イメージ通りには中々いかないのが現場の常ですが、

その難題を乗り越えてくれるのはいつも現場の職人さんです。

設計の僕の力は現場ではオマケみたいな物で、

今回の「早瀬の家」の建て方も主役は大工さんたちでした。。。

葛西 瑞都

 
 

「早瀬の家」

北津軽郡の鶴田町に建つ「早瀬の家」をご紹介します。

ご夫婦と2人の子供が暮らすための住宅で、

シンプルなイエ型をしています。

建物の末端部分にまとまった広さの「内庭」という

外部空間があって、リビングスペースが

延長されているような身近な距離感があります。

元々この空間を建て主さんにご提案した理由には

内部だけで完結しない空間をつくりたかった事と、

奥様が植物を触るのが好きなことがあります。

なので、内部に寄り添うような外部を

つくりたいと思いました。

床面積という数字的な大きさを飛び越えるための

空間でもあります。

内庭の大きなスケールと呼応するように天井は高く。

真上にある2階の床を60センチ位持ち上げて、

2階床の裏面がそのまま1階の天井。

構造材も現しにしています。

ハンモックや植物の鉢が吊るし放題です。

木で仕上げるリビング階段には小さなにじり口。

テレビボードの一部を踏み台にして進むと、

奥には畳敷きの小さな書斎があります。

このお家の隠れキャラ的な存在です。

キッチンの床はリビングに面した黒い土間が続いていて、

55センチ程下げることで掘りごたつテーブルに

座っている家族とキッチンに立つ人との高さを

合わせています。

写真の右側は加熱機器を組み込むステンレス天板、

左側はシンクを組み込む木製天板です。

次は内庭へ。

内庭はテーブルセットが置ける位の土間が

あって、植物たちに囲まれているような雰囲気です。


↑内庭とLDKとの関係がわかります。

物件紹介のページに無い写真も少しだけ。

(飛び石にはモザイクタイルの切れ端を

使いました。中々良い雰囲気です)

一応植栽の設計もしていて、家庭菜園や草花、

低木、中木を設えたいと思っています。

直射日光のあまり必要ない植物が植えられます。

モミジなど、季節感のあるものも良いですね。

次は2階へ。

LDKの真上にあるベッドルームは浮遊感のある

屋根裏部屋のような空間です。

吹き抜けに掛かるウッドデッキ製の渡り廊下の向こう、

2階の床面からさらに階段で3段上がります。

LDKと同じように全面開口で内庭と接していて、

空を近くに感じることができます。

天井は屋根の形で木で仕上げ、ここも構造材を

現しにしています。

実はこのベッドルーム、設計当初は「子供部屋」

という名前でした。(将来は2室に仕切る予定)

あまりに気持ち良さそうだったので子供だけズルい!

ということで部屋名を変更。

別にもう一部屋ある「元主寝室」がとりあえずの

子供部屋ということになりそうです(笑)

この細長いベッドルームには内庭上部の

両サイドにウッドデッキテラスがあります。

部屋着のままふらっと出て、

洗濯物を干したり景色を楽しんだり、

植栽に直接触れられると楽しいなぁとか

考えています。

 

地鎮祭も終えて、いよいよ着工です!

 

葛西 瑞都

 
 

家の模型を展示することのリアリティ。

弘前市の早稲田に、完成済みや進行中の

模型を展示したギャラリーがあります。

元々小さなスペースの中に大きな模型が

ゴロゴロと並んでいて、

ずいぶん前から飽和状態。

少しずつ藤崎町の本社に送ったりしながら

やりくりしている状態です。

そんなギャラリーで仕事をしているのですが、

たまにふらっと見学に来てくれる人がいます。

その中の、先日初めて来て下さったご家族との

会話の中で少し発見したことがあります。

いつも通りひとつひとつの模型について、

こういう建物になった経緯や理由などを

説明していたのですが、

その時、不意に

「こんなリアルな展示場初めてです」

と言われました。

はて、リアルとはどういうことかな??

よくよく考えてみると、

通常住宅の展示場というのは

見学する人に向けて全ての展示物が作られています。

写真や実物を展示して、

「こんなキッチンいかがですか?」

とか、

「このインテリア、格好良いでしょ?」

みたいなことを、なるべくリアルに

表現しています。

建てる家の未来像について、

こんなに素敵な家が建ちますよ!

というのが一般的だと思います。

それに比べると、こちらで展示している

模型達はほぼ全てが過去に造られた

実物と同じものです。

工事前に建て主さんとイメージを

共有するために製作して、自宅に

持ち帰ってもらいじっくり眺められ、

試行錯誤の役に立ったリアリティがあります。

たまにコーヒーの染みとか付いてたりして(笑)。


一般的な展示と決定的に違うのは、

それぞれの模型が過去の家づくりの様子を

伝えていることです。

よくよく考えてみると、ここで伝えたいのは

僕たちの家づくりに対する考え方とか、

建て主さんとの付き合い方みたいなもの

かもしれません。

表面上のココがカッコいいとか、

ココがかわいいとかを話すよりも、

内側に潜む、ココを決めるのに

みんなで悩んで苦労した!とか、

ココは子供の本能に委ねた!とか、

そこかしこにまつわるお話の方が面白いと

感じることもよくあります。

多分、家づくりを楽しむ秘訣のひとつは

「楽しく悩む」こと。それを考える時に、

今まで他の人達がどういうことで

楽しく悩んでいたかを垣間見られるこの展示は、

結構大きな意味があるかもしれないなぁと

感じる小春日和でありました。

葛西 瑞都