これから着工するプロジェクトのひとつに、
弘前市の岩木山のふもとに建つ
ドッグカフェの併用住宅がありまして、
少しだけご紹介。。。
敷地はアソベの森いわき荘へ続く道と
嶽温泉郷へ続く道の交差点にある、
まわりに大きな建物のないひらけた場所です。
多くの観光客や家族連れの人が行き交う道に
面しているので、景観を邪魔しない建物にしたいと
考えました。
![](https://mizuiro-architects.com/wp-content/uploads/2019/10/20180301.jpg)
小さなドッグカフェがある1階と、
1階よりひとまわり大きな2階。
小さな木の箱の上に白い家型のボリュームが
のっかっている外観です。
![](https://mizuiro-architects.com/wp-content/uploads/2019/10/20180302.jpg)
2階の外壁が全周にわたって45cmくらい
跳ねだしていて、
ぐるりと小さな軒下が生まれています。
地面から軒下までは2.2mほどの低い重心。
このたった45cmの軒の出によって
出入りの時に雨が降っていても濡れずに
傘を使えたり、夏には庇の様に直射日光を
遮ってくれたり、薪ストーブ用の薪を
置いておくスペースになったり、
木製の外壁から雨や雪を遠ざけたりと、
なにかと良いことがたくさんあります。
お店に入る時も白いイエの下をくぐる
感じがなんだか楽しそうですし。。
内部はこんな感じです↓
![](https://mizuiro-architects.com/wp-content/uploads/2019/10/20180303.jpg)
![](https://mizuiro-architects.com/wp-content/uploads/2019/10/20180304.jpg)
![](https://mizuiro-architects.com/wp-content/uploads/2019/10/20180305.jpg)
コンクリートの床と、規則的な木の構造を
現しにしたシンプルな空間。
天井はフッと高く上げて、隣地に広がる
リンゴ畑とその向こうの岩木山が見えるよう
一面を全面開口にしています。
(奥には薪ストーブ)
通常、木造の間仕切り壁は10.5cm角の柱の
両面にプラスターボードという仕上げの
下地材を張って造りますが、
設計する内にその壁の厚みが空間を
圧迫していると感じました。
そこで、柱の両側を仕上げで隠す事をやめて、
柱の有無と無関係に厚さ3cmの木の合板で
バンバン仕切っています。
扉も同じ厚さで同じ材料で製作するので、
壁自体に切れ目が入って開閉するような
体験になります。
厚い合板を建てるだけでもうそれが
ほぼ仕上がりになるので、大工さんは
作業の正確さとキズを付けないよう
一層の注意が必要になるし、
普段壁の中を自由に使えるはずの
配線・配管スペースがないので、電気屋さんや
設備屋さんも大変だったりしますが、
それがこのお店の少し非日常的な居心地を
つくるのに重要なポイントになると
考えています。
そしてもうひとつ、今回イチからつくる
テーブルセットについて
「よ~く考えること」
を僕の中で大きなテーマとしています。
言うまでも無く、テーブルとイスは喫茶店にとって
とても大事な主役です。
通常の喫茶店であれば人の居心地が
良いかどうかが重要ですが、
ドッグカフェの場合は少し違います。
訪れる人達はみんな自分が寛ぐためだけ
ではなく、きっと飼い犬と特別な時間を
過ごしたいという目的があります。
![](https://mizuiro-architects.com/wp-content/uploads/2019/10/20180306.jpg)
インターネットや雑誌を調べてみると、
飼い主とワンちゃんは大体一緒にゴハンを
食べているのですが、飼い主がワンちゃんの
様子を見たい時には自分の手を止めて、
テーブルの下を覗き込んでいました。
そこで、テーブルの天板をガラスにすることで、
飼い主がゴハンを食べながら
ワンちゃんを見られるようにと考えました。
するとワンちゃんはテーブルの真下、
家族の足元に居られるので安心できますし、
他のワンちゃんと自然に距離を保てます。
視線が通るガラスの天板は店内を広く
感じられる意味もありますが、
イスはあえて木箱のようなベンチにすることで
テーブルの下のワンちゃんにとって
小さな個室のような空間をつくっています。
またベンチは荷物入れにもなっていて、
飼い主の匂いが付いたカバンなどがそばに
あることでワンちゃんは
さらにリラックスできます。
大きな店舗ではないので、人数に柔軟に
対応できるようテーブルとイスは全て
2人用サイズで可動式。
くっつけたり離したりずらっと並べたりと
フレキシブルです。
ということを考えて、上の写真のような
模型をつくって建て主さんと打合せを
したところ、
「テーブルの四隅の脚がベンチに座るときに
邪魔かも」
というお話が出てきて改善したのがこちら↓
![](https://mizuiro-architects.com/wp-content/uploads/2019/10/20180307.jpg)
1/10スケールで詳細まで作りました。
テーブルの両側の中央にだけ脚を立てて、
ベンチの立ち座りがしやすそうです。
脚部にはアイアン、天板にはガラス、
その枠には木が使われる予定で、色々な
職人が関わる家具になりそうです。
天板越しにワンちゃんが見える!はず。
![](https://mizuiro-architects.com/wp-content/uploads/2019/10/20180308.jpg)
家具を建築の様に考えて設計することで、
新しい概念で普遍的なアイディアが
生まれるような気がしています。
(このテーブルはワンちゃんにとっては
柱と天井のようだし、ベンチは壁のようです)
なんだか半分くらいテーブルセットのお話に
なってしまいましたが、
着工が待ち遠しいです!
おそらく完成は7月か8月で、
オープンはもう少し先?
というかまだお店の名前もありませんけど、
犬を飼っている方も飼っていない方も、
ぜひいらして下さいね!
(お店のご夫婦は物静かで気さくで
とっても良い人ですよ)
葛西 瑞都
2018年3月30日 (金曜日)